ん?この声、ロボロか?身動きが取れん、一体何があったんや?
体に力を入れると確かに痛みがある。冷静になってしっかりといま掬える情報を確認する。
……多分だけど、瓦礫に潰されたんか?硬いし痛いし、研究所もコンクリートで作られとったし…
何でいきなり……あと眼鏡が無い。
そんな事を考えていると、ロボロから焦った声で、生死?を確認してきた。
幸いにも感覚的に痛みは無い。
直ぐにロボロに念を送り、生きている事をロボロに知らせる。
「まっててな、すぐ助けるから!」と言ってプツリと能力が切れてしまった。
痛いなぁとしか思えない。だが信じて待とう、きっと来てくれる。
しばらくすると、ブワッと何かが体を包み、瓦礫の重さがパッと消え、直ぐに日の光が差してきた
暗さに慣れてしまった目が、久しぶりに感じる天然の光にチカチカと反射している。
だんだんと光に慣れ、目の靄が、無くなり、自分の事を助けてくれただろう
ゾムの姿がモヤーッと見えてきた。
眼鏡が無いのでよく見えないのだが
多分ニカッと笑いながら、手を差し伸べてきたので、俺はためらう事なくその手を右の手で取った。
純粋にお礼を言うと、今度は明確にゾムの笑顔が見えた。
すると遠くの方からロボロの声が聞こえてきた。
息を切らしながらロボロは何があったのか教えてくれた。
あいつの仕業かい!粉砕ってもう眼鏡かけんでも分かる、何も無いやんけ!整地されとるやん!
ホンマ呆れるくらい強い能力で、
今更感があったがそれに気づいたゾムはエーミールを呼んでいた。
よく見えないがエーミールが走って来ているのが分かる。
するとエーミールの笑顔と一緒に何かが差し出された。
そっと触れる。温度、肌触りから慣れた、お気に入りの眼鏡そっくりである。
ありがたくその眼鏡を受け取り、かけた。すると、透き通るようなフワフワな雲が目に映った。
改めて辺りを見回すと、みんなと、瓦礫、血痕、研究員達の死体などが転がっていた
だが俺が思ったのは、こいつらが本当に犯罪者なのか、と疑うくらい笑顔が眩しかったことだった。
続く
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。