第2話

死にたい俺は、生きたかった君と出逢った。
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2020/03/10 16:57
あぁ……清々しい。
俺は久しぶりに晴れやかな、幸せを味わっていた。

深呼吸して、上履きを脱ぐ。
上履きを重りに遺書を置く。
あとは……
フェンスに手足掛けて、フェンスを超えるだけ。

「さよなら。ろくでもない俺の人生。」

手を掛けてフェンスを登ろうとしたが……

登れなかった。

「死ぬの??」

少女の声が聞こえた。

嘘だ。
今ここにいるのは俺一人なのに……

声をした方向を見る。

艶やかな黒い長髪。
黒曜石を連想する瞳。
紺色のセーラー服。
紺の中で、一際目立つ赤いスカーフ。
この学校で、俺と同じ学年の印でもある。
でも見たことない。
なんで見たことないか……
それは彼女の足元に理由があった……。


彼女の足元は透けていた。

「君は……??」

「私は草薙清良くさなぎせいら。ずっと前にここで死んだの。」
「じゃあ…幽霊なんだ……」
「そうだね。で……君は??」
「俺は菅谷秋人すがやあきと。」
「ねぇ、なんで秋人はここに来たの??」
「…終わりにしたかったから。」
「ここから飛び降りて??」
「あぁ……」
「何を終わりにしたかったの??」
「人生。クラスメイトからいじめられて、担任も親も知らんぷり。こんな透明な俺だから、飛び降りていなくなっても誰も困らない。そう思った。」
「そっか。私と同じだ……」
「私もね……。学校でイジメを受けて、誰も助けてくれなかった。親には虐待され続けて…。だから私はここで飛び降りたの。」
「……」
「でも今は後悔してる。」
「え?」
「いじめたアイツらは反省もせずのうのうと生きて、担任もアイツらも私を忘れてる。」
「もっと生きて、幸せになって復讐すれば良かった。って今では思ってる。」
「だからお願い。今死なないで……!」
「辛かったら毎日屋上へ来て……!!!」
「私が秋人の話を聞くから……!!!」

清良に逢って、死ぬのが馬鹿らしくなった。
そうだな。
清良の言う通り。
どうせ人間いつか死ぬのなら、盛大に復讐してから死んでやろう。
泣きながら訴える清良。

俺は清良と出逢えて良かった。
屋上に行ってよかった。
そう思った。
人生を終わりにする為に来たのに、生きる勇気を貰ったよ。

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