男は私の前に立つと、
なんだろう…
え…?
顔を上げると、さっきよりも男が近付いていた。
一言一言行くたびに近づいて来る…怖い…
気がつくと、私は男に壁に追い詰められていた。
(壁ドン状態)
命の危機を感じる。
男の手を見ると、丁度杖を取り出しているところだった。
オッパ達の方を見ても、ここは物陰なため見えない。
そういうと、男は私の首に杖を突きつけて、口を開きかけた。
杖が触れた途端、私の体の奥底に眠っていた何かがざわめき出した。
目が少し痛いけど、頭はとても冴えていた。
男は私の目を見て息を呑み、慌てて杖を離した。
私の声とは思えないほどしっかりとした、低くて周りを威圧するような声が出た。
男は一瞬慌てたように見えたが、再び杖を構えて口を開いた。
私は自分の杖を出して、男に向けると、習ったこともない、聞いたこともない呪文を口から放った。
杖からは赤っぽい光がまっすぐと出てきて、男の杖の先に結びついた。
私の腕は震えていたが、安定していた。
私の腕は男の杖を押し出すような動きをした。
すると、男の杖はみるみるうちに、先っぽから割れていった。
男は地面に崩れ落ちた、と思うとぽんっと音を立てて消えていった。
頭がガンガンしているけど、冴えていた。
目も痛いけど視界がぼやけるとか言うのはない。
でも、体に力が入らなかった。
私は地面にぺたっと崩れ落ちるように座ると、ハイハイしながら物陰から出た。
オッパ達が走ってきた。
私は首を横に振った。
足に力が入らない。
私は気がつくとオッパにおんぶされていた。
私達はJYP本社へと向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。