第14話

第14話 青春をやり直しませんか4
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2019/09/20 06:09
ダンス部の練習が終わった放課後、ナインは「ほたる退院祝いパーティー」に招かれた。場所は高校近くのファーストフード店。安いジュースとハンバーガーが食べられる全国展開のチェーン店だ。

こんな店に入るのは初めてだったナインは注文に手惑い、呆れて笑うダンス部員達に教わりながら、どうにか炭酸飲料とハンバーガーを手に入れた。
コタロー
コタロー
山田さんはどこかの御曹司なのでしょうか。こんなどこにでもあるような店に初めて入るとは驚きです
ナイン
ナイン
ははは……、そうじゃないんだけどね……
笑ってごまかすナインの横で、レイジが意地悪く口の端をつりあげた。
レイジ
レイジ
そうそう、ただ世間知らずなだけだよね〜
病院にいた時とは一転、レイジの口調はいつものふざけた感じに戻っていた。
ほたる
ほたる
レイジはポテトしか食べないの?
レイジ
レイジ
うん!今日の夕飯は1番上のお姉ちゃんが担当なんだ。あんまり食べすぎると、夕飯が入らなくなっちゃうからね
もちろん、レイジの家族はこの時代にはいない。全部作り話だ。そうわかってしまうと“架空のお姉さん”の話をする彼がとてつもなく滑稽に見えてしまうが、ナインは笑わなかった。
ナイン
ナイン
(物悲しいピエロに見えるよ。いつも笑っているのに、心では泣いている。そんなにほたるのことが好きなんだね)
シキミ
シキミ
俺はたくさん食うぜ。どうせ家に帰っても弟達がほとんど食っちまうからな
コタロー
コタロー
それはシキミにも言えることかと
シキミ
シキミ
あ”あ”?なんか言ったか、コタロー
コタロー
コタロー
シキミの胃袋は底が知れませんから
シキミ
シキミ
俺をおちょくるなんて上等じゃねぇか。表出ろや
レイジ
レイジ
シキミ、おちょくってるんじゃないよ。コタローは褒めてるんだよ
シキミ
シキミ
あ”?そうなのか?
レイジ
レイジ
そうそう、いっぱい食べる男はかっこよくってモテるよねって
シキミ
シキミ
ああ、そうか……
コタロー
コタロー
本当、単純ですね
ほたる
ほたる
あはははははは!
ナイン
ナイン
(楽しいな。こんな時間が永遠に続けばいいのに)
ナインの歴史を調査する仕事はすでに、半分以上終わっていた。この時代で行う仕事が少なくなるにつれ、どうにか滞在期間を伸ばせないか、そんな想いが強くなってくる。
ナイン
ナイン
(この時代にNo.0が止まりたい気持ち、わかる気がするよ)
空は広くて、自然に流れる川もある。本物の土に根を張る草木。歩いていると、風が頬をくすぐる。栄養補給剤ではない、味のする食べ物の数々。

さまざまな時代へ遡ってきたナインではあったが、こんなに思い入れの強い時代は初めてだった。どうしてだろう。
ナイン
ナイン
(ああ、そうか。君がいるからだ)
向かい側の席で、笑うきみ。健康そのものにしか見えないよ。
ナイン
ナイン
(俺が薬を持ってきさえすれば……)
簡単なことだ。ちょっと、未来に戻って薬を取ってくるだけ。全然、難しいことじゃない。
ナイン
ナイン
(でも、それをしてしまったら……)
タイムトラベラーとしての誇りを失ってしまう。

ナインはシャッターを切るように、目の前で笑う少女を見つめていた。
ナイン
ナイン
(彼女が生きた証がずっと、俺の心に残りますように)

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