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第4話

第4話 始まりは未来から4
レイジが小型コンポを操作すると、重低音の目立つヒップホップ調音楽が流れ始めた。
レイジ
レイジ
ワン、ツーエンスリーエンフォー
カウントに合わせて、ダンス部員がリズムを取り始める。まずは全員が同じ振り付け。次にほたるとレイジ、ヤンキー風のシキミと大人しそうなコタローが2組に分かれて踊りを披露する。そして、サビの部分では手拍子を交えながら4人が入り乱れる。
ナイン
ナイン
(なんだ、これ……)
ナイン
ナイン
(音楽の重低音と、ダンス部員のリズムが合わさって、耳からも目からも体内にショーが入ってくるかのようだ)
ナイン
ナイン
(しかも、心臓のあたりがドキドキしている。俺の胸もリズムに合わせて脈打っているのか)
ナインが衝撃を受けているのもおかまいなしに、容赦無く音楽は鳴り続ける。

他の3人が囲んだ輪の中で、コタローがブレイクダンスを披露。大人しそうな外見とは裏腹に見事なスピンをキメる。続いて、シキミとレイジの息の合ったダンス。かがんだシキミの背中に沿って走りこんできたレイジがくるんと回転し、レイジが足をつくと今度はシキミが片手で倒立をする。そして、ほたるの登場。女性らしい柔軟な動きと華麗なターンで魅せる。

再び音楽は盛り上がり、4人はそろった振り付けを披露する。

なんというか……
ナイン
ナイン
かっこいい
思わず、そう呟いていた。
レイジ
レイジ
ジャン!!
曲が終わって最後の決めポーズで停止していたダンス部のメンバー達が息を切らしながら動き出しても、ナインは放心状態でいた。
ほたる
ほたる
ねぇねぇ、わたし達のダンスどうだった?
ほたる
ほたる
そんなに良くなかったかな……?
ナイン
ナイン
パチパチパチパチ
ナイン
ナイン
すごくかっこよかった……!
ナイン
ナイン
(アンドロイドによるダンスは見慣れていたのに。生身の人間の、身一つで奏でるダンスはケタ違いに良い!見ている俺にまで、ダンサー達の鼓動が伝わってくるかのようだ)
ナイン
ナイン
ダンス部って他にはメンバーいないのか?
シキミ
シキミ
あ”あ”ん!?
コタロー
コタロー
シキミ、落ち着いてください
レイジ
レイジ
もう、シキミってばすぐ怒るんだから〜。ダメだよ。せっかくお兄さんもかっこいいって言ってくれたんだし。そうだ、お兄さんお名前は?
ナイン
ナイン
あっ、えっと……、山田太郎
レイジ
レイジ
へっ!?
ナイン
ナイン
俺の名前は山田太郎だ
会社からそう名乗れと言われている名だ。この時代では一般的な名前だと聞いている。それなのに、目の前のダンス部員達はそろいもそろってゲラゲラと笑った。
レイジ
レイジ
や、山田太郎って……!
シキミ
シキミ
嘘吐くんなら、もうちょっとマシな嘘吐けや!
コタロー
コタロー
小学生でももっとマシな偽名を思いつきますよ
ほたる
ほたる
ははっ……最高!!
ナイン
ナイン
(何がいけなかったのだろう)
レイジ
レイジ
ああ、そうそう山田さん。さっきの質問だけど、他のダンス部員は別の教室で練習しているよ。僕らは部内で『リズムホリック』というチームを組んでいて、この4人で放課後活動してるんだ
ほたる
ほたる
あっ、もしかしてダンスに興味持ってくれた感じですか?
ナイン
ナイン
いや、別に
ナイン
ナイン
(他のチームのダンスも気になるって言ったら、校内を連れまわされそうだ)
ナイン
ナイン
今日は素敵なものを見せてくれてありがとう。それじゃあ、今度こそ失礼するよ
レイジ
レイジ
ええ〜、つまんな〜い。もっと見ていってほしかったのに
シキミ
シキミ
おい、レイジ。この山田さんにも仕事とかあるんだろう。これ以上引き止めちまったら悪いだろ。山田さん、俺達のダンス見てくれてありがとよ
コタロー
コタロー
また、いらしてください
ほたる
ほたる
じゃあわたし送ってくね〜
リズムホリックの男子メンバーが手を振る。もう会うこともないだろう。ほたると一緒に校舎から出ると、西日が辺り一帯に水彩絵の具の滲みのような赤味を加え始めていた。
ほたる
ほたる
あっ、そうだ。コンビニ行こうと思って忘れてたんだ
ナイン
ナイン
(ああ、さっき俺と会って行きそびれたのか)
ナイン
ナイン
それじゃあ、俺はここで
ほたる
ほたる
うん、また……
突然足元が揺れ、ふらっと倒れそうになったほたるをすんでのところで抱きかかえる。その予想以上の軽さに、ナインは驚いた。
ナイン
ナイン
おい、大丈夫か!?
ほたる
ほたる
う……ん……
ほたる
ほたる
薬……
ナイン
ナイン
薬?
ほたる
ほたる
薬……家に忘れてきちゃった
ナイン
ナイン
家ってどこだ
ほたる
ほたる
学校の近く。あっち
ほたるがだらりと垂れ下がった腕を持ち上げて、道路の先を指し示す。彼女の腕を肩に回し、支えながらゆっくりと歩いた。

未来人が過去の時代の人間を介抱していいのか、タイムマシンが普及してきた今でも議論されている問題だ。歴史を守るという観点から見れば、人が倒れようが放っておくべきだ。もし助けてしまったら、その時代の歴史を変えてしまうかもしれないから。

しかし、倫理的観点から目の前で助けを求める人間を見殺しにするのかという意見を持つ者もいる。タイムトラベラーも同じ“人間”だ。助けを求める人がいれば、救いの手を差し伸べるべきだ。
ナイン
ナイン
(歴史的重要人物ならともかく、こんな名もなき街に住む名もなき少女だ。もし彼女がここで死ぬ運命だったとしてそれを救ってしまったとしても、歴史には影響しないだろう)
ナイン
ナイン
(しかも、俺がこの場にいなければ他の生徒や通行人が彼女を救っていたはずだ。俺が助けたところできっと、問題ない)
ほたる
ほたる
ここが、わたしの家……
ほたるが息も絶え絶えに指し示す家は、この時代ではまあまあの高級住宅だった。

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平七羽
平七羽
こんにちは!平七羽(たいらいろは)です。ファンタジーとイケメンをこよなく愛しています。疲れちゃう毎日ですが、少しでも楽しくなるように。そんな小説を書いていきたいと思います╰(*´︶`*)╯💠twitter→@taira_iroha💎(アイコンは「宝ひかるは石の国」表紙でおなじみのkaoliniteさん@okayuatsuiから🎶)
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