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第10話

第10話 ほたるの夢3
ほたる達のダンスは見事だった。

コンテスト会場の端から観ていたナインだったが、その迫力は会場の隅々まで伝わってきた。

昨日のダンスと同じ振り付けのはずなのに、舞台に立ったせいだろうか。ほたる達リズムホリックのメンバーは、一回り大きく見えた。

そして、骨の芯まで響くような重低音。思わず一緒に、リズムを取りたくなってしまう。

他のチームもツワモノぞろいで、ダンスを全く知らないナインでも見応え十分だった。

テレビ局が主催するこの「第1回ネバーエンディングダンスコンテスト」の優勝者には、金一封と特典が授与される。その特典は「優勝者のダンスを永遠に語り継がれる形で残す」というものだった。
ほたる
ほたる
わたし達の踊るダンスって、すぐに忘れられちゃうでしょう。有名な絵画や本はずっと、美術館とか図書館に残される。でも、ヒップホップダンスは歴史が浅い。バレエとかならまだしも、わたし達リズムホリックが踊ったダンスなんて、みんなすぐに忘れちゃう
ほたる
ほたる
だからね、歴史に残したいの。わたし達が踊っていたんだって。この時代に爪痕を残したい
ナイン
ナイン
なんとなく、わかる気がするよ。第二次審査通過、おめでとう
ほたる
ほたる
うん!ありがとう
暗くなった川沿いを、ゆっくり舟を漕ぐように歩く。ほたるは堤防の上をバランスを取りながら歩いていく。まるで、サーカスの綱渡りのようだ。落ちやしないかとヒヤヒヤする。
ほたる
ほたる
今夜は満月ね
ナイン
ナイン
ああ。月が水面にも映っている
ほたる
ほたる
ムーンリバー
ナイン
ナイン
えっ?
ほたる
ほたる
ムーンリバーっていうのよ。水面に月が映って川みたいに見えるでしょう
ナイン
ナイン
へぇ……
2200年にはない言葉だ。未来には、自然に流れる川が少ないせいかもしれない。

他のダンス部員達は、それぞれの用事がありコンテスト結果が出るとすぐに帰ってしまった(レイジはお姉さん達の買い物のつきあい、シキミは弟の世話、コタローは勉強だ)。あとに残されたナインは、ほたるの見送りを命じられた。「女の子が一人で夜道を歩いていたら危ないからね!(byレイジ)」だそうだ。
ナイン
ナイン
(未来では防犯機能を備えたアンドロイドが普及しているから、誰かの用心棒なんてしたこともなかった)
ナイン
ナイン
(まぁ、悪くない)
月の光る夜道で、女の子と2人きり。悪くない。
ほたる
ほたる
あっ……!
堤防から、足を踏み外したほたるが落ちてきた。ナインはとっさに抱きかかえる。
ナイン
ナイン
大丈夫かい?
ほたる
ほたる
ちょっと、暴れすぎたかな……
ナインの胸元で微笑む彼女。コンテストで疲れたことにしたいのだろう。だが、いくら疲れていたって、あれだけ踊れてあれだけバランス感覚のあるほたるが、堤防ごときでよろけるはずはない。同じく体を鍛えているナインには、わかった。
ナイン
ナイン
(運動神経のいい人は、どんなに疲れていたって、普通に歩いていて倒れたりしないんだよ)
ほたる
ほたる
ねぇ、山田さん。わたしのダンス覚えていてくれる?
ほたる
ほたる
今日のダンス、すごかったでしょう。わたしが振り付けしたんだ
ほたる
ほたる
わたし将来、振付師になりたいんだ。みんながわたしの振り付けするダンスを踊るの。ふふっ
ほたる
ほたる
バレエとかみたいに、ヒップホップもお芝居に取り入れられてほしい。何十年も何百年も残るダンスを作りたい
ほたる
ほたる
わたしのダンスを忘れないでほしいの。わたしが生きてきた証が残るように
頭上の月がほたるの瞳に映り、きらきらと輝いている。
ナイン
ナイン
まるで最後のお別れみたいじゃないか
ほたる
ほたる
ははっ。本当っ!
ほたる
ほたる
よいしょ
ほたる
ほたる
山田さん、受け止めてくれてありがとう。もう大丈夫。帰ろ
ナイン
ナイン
うん
ナイン
ナイン
(ああ、君は本当に、自分でも気づいているんだね。もう先が長くないってこと)
夜空に浮かぶ満月が、並んで歩く2人を優しく照らしていた。

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平七羽
平七羽
こんにちは!平七羽(たいらいろは)です。ファンタジーとイケメンをこよなく愛しています。疲れちゃう毎日ですが、少しでも楽しくなるように。そんな小説を書いていきたいと思います╰(*´︶`*)╯💠twitter→@taira_iroha💎(アイコンは「宝ひかるは石の国」表紙でおなじみのkaoliniteさん@okayuatsuiから🎶)
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