第15話

第15話 青春をやり直しませんか5
366
2019/09/27 06:09
AI
ホウコクガ カンリョウ イタシマシタ
ナイン
ナイン
よし!
午後3時過ぎ、ナインはその日の報告を登録した。装着した手袋には最先端の機能が搭載されており、空中に画面を表示させて2200年と通信することができるのだ。

画面を閉じると、高校へ向かった。ほたる達と過ごす時間を作るため、朝早くから活動し、夕方前には仕事を終えられるようにしているのだ。
ナイン
ナイン
(本当だったら、拠点を決めずに放浪の旅をしている方が体がラクなんだけどね)
日本各地を順々に巡っていった方が効率も良いし、移動時間が少なくて済む。
ナイン
ナイン
(それでもここに戻ってきてしまうのは……)
ほたる
ほたる
山田さーん、こっちこっち!
ナイン
ナイン
(君がいるからだよね)
ほたる
ほたる
今日は新しい曲を通しで練習するから、見てほしいんだ
ナイン
ナイン
的外れな感想にならないといいけど
ほたる
ほたる
平気平気!
ほたる
ほたる
あっ、レイジからメッセージ届いてる
ほたる
ほたる
ゲッ!練習室に先生が来てるって。山田さん、見られたらやばいじゃん!
ナイン
ナイン
一応、護身術なら長けているけど
ほたる
ほたる
先生を倒しちゃダメだって!ひとまず、屋上に隠れよう
ナイン
ナイン
(屋上って逆に目立つんじゃ……)
ほたる
ほたる
早く早く!
ほたるに連れられ、階段を駆け上がる。屋上へと続く階段は少しほこりっぽく、2人が通ると舞い上がった塵が陽の光を受けて輝いた。
ほたる
ほたる
わぁ、気持ちいい!
扉を開けると、澄んだ青空が広がっていた。遠くの方に山が見える。

ほたるの長い髪が風になびく。
ナイン
ナイン
(映画のワンシーンみたいだ)
ほたる
ほたる
そうだ!これも山田さんの青春時代になるね
ほたる
ほたる
山田さんが学生の頃にできなかった青春時代
ほたる
ほたる
わたし達と部活動して、帰りにハンバーガー食べて、こうやって立ち入り禁止の屋上に逃げ込んで
ほたる
ほたる
わたしの存在も山田さんの青春の1ページに刻まれているのかな
ナイン
ナイン
1ページどころなんてもんじゃないよ
ほたる
ほたる
あはは!わたしの大勝利!
ほたる
ほたる
山田さん、コミュ障みたいなしゃべり方、直ってきたね
ナイン
ナイン
散々、君達と話しているからね
ナイン
ナイン
(昔の自分がどんな話し方をしていたかなんて、もう忘れてしまったよ)
ほたる
ほたる
そうだね!……おっと
ふいによろけたほたるを、持ち前の瞬発力でナインが支える。
ナイン
ナイン
大丈夫かい?
ほたる
ほたる
うん……
ほたる
ほたる
山田さんの心臓、ドキドキしてる
ほたる
ほたる
生きてるって感じ
胸に顔をうずめるほたるを優しく抱きしめた。先程までなびいていた髪が、ナインの手の中にある。
ナイン
ナイン
(長くてきれいな髪……。さらさらする)
こんなにも彼女はあたたかいのに、ここにしっかりと存在しているのに。
ナイン
ナイン
もし……
ナイン
ナイン
もし、俺が君の病気を治せるとしたら……
ほたる
ほたる
レイジと同じこと言うんだね
ほたる
ほたる
治せるもんだったら、治してもらいたいよ。わたしだってもっと生きたい。でも……
ほたる
ほたる
それは正しいことなのかな
ほたる
ほたる
山田さんやレイジが少しでも後ろめたいようなことになるなら、わたしはそれを望まない
ほたる
ほたる
だって、山田さん、いつも仕事熱心でかっこいいんだもん。わたしもあなたのように自分に誇りを持てる人になりたいの。あなたやレイジが一生懸命に生きているから、わたしも頑張れる。“今を生きてる”って感じがするの
ほたる
ほたる
だから、あなたも自分自身に誇りを持ってほしいの。誇りを持てる行動をしてほしいの
ナイン
ナイン
……!
ナイン
ナイン
そう言ってもらえてすごく嬉しいよ
涙がこぼれそうなのを悟られないように、彼女の小さな頭をぎゅっと抱きしめた。
ナイン
ナイン
(もしかしたら君は、俺達が未来人だってこと、知っているのかもしれないね)
翌日から、ほたるは学校に来なくなった。

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