第11話

断らなかった理由
39
2019/12/11 22:00
「…俺、莉音のことが好きだ」
莉音
莉音
ーーーーっ!
奏人
奏人
…悪い、もう堪えきれなくなって
莉音は俺のために、彼女のフリしてくれてんのに…俺は…っ
奏人の声は、震えていた。
莉音
莉音
奏人…私…
奏人
奏人
…忘れてくれ
なかったことに…してくれ…っ
奏人は、私から離れた。
莉音
莉音
…っ、奏人!
ようやく奏人が顔を上げた。
目には涙が浮かんでいる。
莉音
莉音
…告白の返事、今すぐには出せない
でも、ちゃんと考えるから
奏人は目を見開いた。
奏人
奏人
好きな人、いるんじゃないの?
莉音
莉音
…そのこともあるから、ちゃんと考えさせてほしいんだ
奏人
奏人
そっか…
奏人は、ちゃんと聞いていないと聞き取れないくらい小さな声で言った。
奏人
奏人
…ありがとう
莉音
莉音
…うん!
???
あの、市原くん!
背後で声がした。
奏人
奏人
あ…
奏人が何かを悟ったふうに、声をもらした。
私達の後ろに、同級生くらいの女の子が立っていた。
「市原くん」って言ってたし、奏人の知り合いかな…
???
あの、お話中悪いんだけど、市原くんと二人で話をしたいんだけど、ダメかな?
莉音
莉音
大丈夫ですけど…どなた様ですか?
三葉さん
三葉さん
あ、ご挨拶遅れました
私、バスケ部のマネージャーの者です
三葉みつば彩菜あやなと言いますっ
そう言って、三葉さんは頭をペコッと下げた。
なんだろう…なんか、めっちゃ小さいな。
身長は、140センチあるのか分からないほど小さい。
そして細い。
奏人
奏人
…部活のこと?
三葉さん
三葉さん
あ、いや、なんていうか…///
三葉さんの顔がポッと赤くなった。
あー、多分今から告白するんだな。
莉音
莉音
…奏人、行ってきなよ
私そこら辺にいるからさ
奏人
奏人
え、でも…
奏人が何か言いたげに私を見る。
莉音
莉音
私のことなんかいいから、行ってきなって!
私は思わず強い口調になってしまった。
奏人は、少しビクッとした後、小さく溜め息をついた。
奏人
奏人
…三葉、行こう
三葉さん
三葉さん
う、うん…
三葉さんは、少し心配そうな目で私を見てから、奏人と一緒に人混みへ消えていった。
今日の私、どうかしてる…
渡瀬くんが好きなはずなのに、奏人を振れなかった。
さっきだって、あんな言い方…
すごくモヤモヤする。
奏人って、三葉さんと仲良いのかな…
私についた溜め息。
人混みへ消えていく奏人の背中。
全て、どこか寂しそうだった。
なんで寂しいの?
そして…
「私のことなんかいいから、行ってきなって!」
私は…なんであんな言い方をしたの?
莉音
莉音
……っ
答えは分かっていた。
私は…奏人が隣からいなくなることに、寂しさを感じているんだ。
私…奏人のこと、好きになっちゃったんだ。
莉音
莉音
…気づくの、遅すぎでしょ
もう、チャンスは通り過ぎてしまった。
それだけじゃない。
あんな言い方をしたんだ。
もう、今までのようには戻れないかもしれない。
私は、その場に崩れ落ちた。

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