第4話

もう一人のモテ男
54
2019/08/20 02:10
女子達が去って行った後、私は誰にも聞かれないように、声をひそめて奏人に話しかけた。
莉音
莉音
ねね、奏人
奏人
奏人
ん?
奏人も私に合わせて、声をひそめた。
莉音
莉音
どっちから告白したかってのも決めといた方がいいみたい
奏人
奏人
いや、でも、決めなくても俺が莉音に告白した感じになってるじゃん?
莉音
莉音
あー、まあね
なら、そういう設定にしとく?
奏人
奏人
うん
間違っても絶対莉音からはないもんな
莉音
莉音
そそ
奏人、よく分かってんじゃん。
奏人
奏人
じゃ、そういうことで
莉音
莉音
おけ
私からはないのは分かるけど…奏人からっていうのはあるのかな…
まあ、どっちでもいいんだけどね。
??
佐~々木さんっ!
莉音
莉音
わっ!
この声は…!
渡瀬くん
渡瀬くん
えへへ、びっくりした?
莉音
莉音
渡瀬わたせくん!
彼は、渡瀬わたせ響希ひびきくん。
奏人の友達で、何かと話すことが多い、可愛い系イケメン男子だ。
そして…私が今少し気になっている相手でもある。
渡瀬くん
渡瀬くん
今日はえらく奏人と仲良さげだけど、何かあったの?
莉音
莉音
あー、えっと…
奏人
奏人
莉音、響希、ちょっとこっち来て
急に奏人が目の前に現れて、私と渡瀬くんの手を引いて、どこかへ向かいだした。
莉音
莉音
え、ちょっと!どこ行くつもり?
奏人
奏人
いいから
奏人、なんか怒ってる?
私が渡瀬くんに事情を話そうとしたからかな…
私は、黙って奏人についていった。
奏人は、私達を誰もいない廊下まで連れてくると、私に向かってこう言った。
奏人
奏人
おい莉音、お前あそこで・・・・言おうとしただろ
やっぱりそのことか…
…ん?「あそこで」?
奏人
奏人
まわりが聞いてるかもしれないと思っておかないと
奏人
奏人
あ、響希、これ、俺達3人だけの秘密なんだけど、実は俺、莉音に彼女のフリをして貰ってるんだ
え?言っちゃっていいの?
渡瀬くん
渡瀬くん
あー、そういうことね
でも、なんで僕はいいの?
奏人
奏人
色々相談乗って貰いたいから
そう言って、奏人はチラッと私を見た。
え…
もしかして、私のために…?
私が渡瀬くんが好きって知ってて、誤解されないようにしてくれたのかな…
…いや。
奏人は、恋愛のことには結構疎い。
だから、おそらくさっき言ったままのことだ。
私をチラッと見たのは、多分そんな意味はない。
都合の良いように解釈してた…
渡瀬くん
渡瀬くん
でも良かった~
莉音
莉音
え?
渡瀬くん
渡瀬くん
もし本当に付き合ってたら、多分3人で話す時間減ってたし
渡瀬くん
渡瀬くん
僕、奏人とも、佐々木さんとも、話すの結構好きなんだ
「佐々木さんとも、話すの結構好きなんだ」
莉音
莉音
何だ、この私の心にグサッとくる言葉は…
渡瀬くん、かっこよすぎる。

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