誰かが救急車をよんでくれた。
あなたは頭から血を流していた。
自分が助けていられれば...
二人はそんな気持ちだった。
俺が、助けられなかった。
ピーポーピーポー
救急車がやっときた。
二人は一緒に救急車にのり、病院まであなたの両手を握っていた。
病院についた。
先生に、ここで待っていろと言われた。
手術中というランプが光った。
あなたの両親が駆けつけた。
僕らの顔を見て、事態の深刻さが理解できたようだった。
何十分も沈黙が続いた。
あなたのお母さんは泣いていた。
僕たちはどうにもできなくて、
ただ黙っていた。
ランプの光が消え、先生が出てきた。
僕らは、フラフラと腰を下ろした。
一安心していたが、
あなたの記憶がなくなってしまうことを
僕らはまだ、
知らなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。