第3話

諦め
18
2022/06/29 09:45
幸はいじめられていた。物を盗られ、壊され、笑われて。毎日が苦痛だった。学校は地獄だ。
いじめっ子
いじめっ子
お前キモいんだよ
いじめっ子
いじめっ子
男の子なのに三編みしてるのおかしい
容姿を貶され、暴力を振るわれることもあった。
幸(ゆき)
幸(ゆき)
なっ……何で…………っ
幸は悔しくて堪らなかった。それなのに自分の性格が邪魔をして、言い返すことも出来なかった。


8月某日。夏休み中の学校は生徒も先生も居ないので、しんと静まり返っていた。そんな中、幸は廊下をゆったりとした足取りで歩いていた。こんなに苦しいなら、もう何もかも諦めてしまおう。逃げてしまおう。そう、思ったのだ。
幸(ゆき)
幸(ゆき)
や、やっぱりやめようかな……
辿り着いた屋上から真下を覗き込む。想像の何倍も遠くに地面がある。その光景に幸は怖気付いた。しかし、幸にとって生きることより辛く、怖いものなど無かった。
幸(ゆき)
幸(ゆき)
もう、いいんだ
ゆっくりと体を傾ける。暖かい風が背中を撫でてくれた。そして、重力通りに幸は地面に引き付けられた。景色がスローモーションのようにゆっくりと流れた。蝉の声だけが、異常なほど響いていた。
幸(ゆき)
幸(ゆき)
これでぼくも、しあわ
地面に身体を強く叩きつけられた。骨が折れ、内臓が損傷する。無惨な姿になった幸は、もうピクリとも動かなかった。

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