第2話

事実と夢
91
2019/03/07 03:15
「泣き崩れそうな頼りない陽が見えた」
そんなことを思った最後だった



_3月2日午後日没前_[莉海side]

遠い遠い真っ直ぐ前には3分の2沈んでいるにも関わらず激しく自己主張をしている夕日がある
あまりに眩しくて思わず手で目を庇う。

春の訪れをまだ感じられない3月始めの空気は冷たく凜とした空気であの夕日は何の為にいるんだと思うが、その空気が風にのって私の肩より少し長めの髪を思い切り吹き抜けていくから考えるのもやめた

「寒い」
母が用意してくれた結構な量の防寒具のお陰もあり体温的にはそんなに寒いわけではないのだが、何も感じずに歩いているのはなんだか生きている気しない気がして、なんとなく声を出す

そんな昨日と同じ今日を歩いている

家でも学校でも結構楽しいしこの‘いつもどうり’が“幸せ”なんだと思う。けど心のどこかに穴が開いてるみたいに何かが足りない。
この感情が何か…よくわからない。
「けどやっぱりこの穴が気になるようになったのは“あの日”からなのかな…」
ふと呟いたそのときだった

何の予兆もなしにいきなり体全体に稲妻のように寒気のようなものが物凄い勢いで駈け走った
「うぅ…な…にこれ…きもちゎる…」
目の前の景色も物凄い勢いで回っていく。
「ほんとになんなの…こ…れ…」
体は今にも崩れ落ちてしまいそうなのにやけに意識だけははっきりしていた


真っ暗に…なった


『ブーーーー』
昔はよく聞いた映画が始まる時の音が鳴り、頭のなかに映像が流れる。
「ここはさっき私が立っていた通学路ではない…違うところだ…どこだろ…」
そこは見たことがないような少し古くさい町並みだった
体はまだ痛みに縛られていて身動き一つとれなかったし、回りには人がいるのにその人達は私を見ない。
「見えていないみたい…」
この状況に理解が追い付かない。ここはどこ?私の身に何が起こっているの?
「夢?」
いや、夢にしては見える景色が、空気が、命が、鮮明に見えた。

そこで映像に動きが見えた
これまた古くさい団地からオレンジ色の髪色が綺麗な小学3,4年生くらいの男の子が走ってきた。急いでいるようだ。
だけどその男の子の向かう先の角にはスピードを落とさず曲がろうとしているトラックが…
お互いに気づいていない。この後の悲劇に

そしてそこから映像はスローモーションへ切り替わった。
体は何かに縛られ、囚われていたのに心臓が、胸が張り裂けそうなくらい鳴っている。まるで人間本来の本能が活動し始めたみたいだ

パリン--
その音が合図のように痛みで縛られていた体が自由になり、なぜか1㌔もないくらい軽く感じた。
「あっ…………れ…は…しれ…はしれ…」
「走れ…走れ走れ走れ走れ走れ走れ!!」
もうこれが何かなんて後ででいい。
「まずは…男の子だ!」
必死に足を動かして腕も振った。
スローモーションにはなっているけどそれでも時は確実に進む。トラックと男の子の距離が、私と男の子の距離が縮む

こんなに必死になったのはいつぶりだろうか。
こんな現実離れしたよくわからない場所。よくわからない自分の体。だけど生きていた。
元々の私の世界にいたときより今この瞬間私は生きていたと実感した。


トラックと男の子があと15㍍
私と男の子があと20㍍
「間に合うか…!!?」
そして必死に走りながら私はある男子のことを思い出していた。男の子のような明るいオレンジの髪色の王子様のような私の片想いの相手のことだった。名前は夏里陽姫くん。とても明るくて優しくて人気者で…隣のクラスの私のことなんか認知しているかすら怪しいけど、私は彼に不良から助けられて、それからずっと小さく秘密にゆっくりと想い続けてた。きっと叶わない恋だし、告白なんてできっこない。少しずつ諦めていた。けど彼のお陰で毎日が少し輝いていた。だから彼は私の陽だ。

なぜ今こんなことを思い出したのかもわからなかった


そしてそんな間に
トラックと男の子が3㍍
私と男の子が3㍍
もうトラックと男の子はお互いの事に気づいていた。私と違ってスローモーションじゃない二人にとっては絶体絶命のピンチだろう。
けど私なら助けられる。
私と男の子が1㍍…50㌢…10㌢…0
私は思い切り男の子を手で押し飛ばした。
とても重く、黒かった。まるで手が呑み込まれるような錯覚…
夕日が沈んだ
そして私1人眩しいトラックの光を浴びて
ドンッ--
鈍い低い音。意識が薄くなる。周りはもう私が見えてるようだ。絶望の表情。だけど不思議と私は怖くなかった。
ただ死ぬ前に見れたのが彼と同じオレンジ色の綺麗な髪色できれいだなぁなんて思っていた

もう死ぬのかなぁというかなんでこうなったんだろう。ここはどこ?これは私なのかな。結局なにもしないまま中学生も終わるんだなぁどう頑張れば良かったのかなぁ彼に会いたかった彼と話したかった。夢や妄想だけじゃなくて触れたかったなぁ。ちょっと死にたくない。後悔がある。もっと早くやれば。“後で”なんて、もうないのに。間に合わない…ね。

目をゆっくり開けてみる
血…かな。なんだかきもちわる…

なんだか逃げ出したくてやっぱり目を閉じると私の記憶にはない彼の泣き出しそうな笑顔が浮かんでそこで私の意識は途切れた



















作者からのあとがき

すみません!申し訳ありません!自分でもこれほどひどいとは思いませんでした!
まず設定のこじつけがひどい!落ち着け!
そして全てが謎!考察の仕様もない!
でもこれからなんとなくまとめてばばっとできたら。と思います…
頑張りますので見捨てないでやってください…

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