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第10話

想いと弱点
_?_[莉海]

私は死んだんだな。
透けてる体全体とぼやけてよく見えない脚がその証拠だ。
服は夏着るような肩出しのトップスにカーディガンがかけられていて最近夏里くんが好きだって言っていた優しい色のロングスカートを着ていた。
死んだときは制服だったんだけどなぁ…とか考えても意味なさそうなことを考えた。

私は事故現場にいた。地縛霊にでもなったのかな?あ、動ける。
私は特に行きたい場所も浮かばなかった。けど足は勝手に自分の家に向かっていた。
見れたのは自分の家に黒い服を着た人たちが入っていく場面だった。あぁ、私はほんとに死んでしまったんだなと嫌と言うほど理解させられた。
入れなかった。自分の家なのに、やけに緊張してしまって。残してしまった家族への罪悪感で胸が押し潰されそうになる。ここにいちゃだめだ。私は逃げるように歩きだした。



何も考える気にもならず、ただひたすらに歩いていた。
何も考えたくなかった。けど足は正直なのか知らないけど行ったことも聞いたこともない夏里くんの家の前に向かっていたらしい。夏里という看板がついている家の前に立っていた。

涙がこぼれそうになる。
想いと共に溢れてしまいそうだ。
会ってはいけない。と頭が呼び掛けている。
想いを伝えたいと思ってしまう。
想いを伝えることも、振られることもできないのに。
ただ、苦しいだけなのに…

だけどもし、もし不思議な世界の少年が夏里くんなら、私は彼に会いたい。いや、会わなければならない。何もできなくても。
だって

少年は



泣いていたから







そして気づくと私は夏里くんの家のリビングらしきところに立っていた。


くるりと周りを見渡す。するとオレンジ色の綺麗な花が飾られている仏壇があり、その前に彼は居た。背筋を伸ばしているその姿を見るとなんだかこちらまで気が引き締まる。

誰の…だろう。

仏壇の写真に写っていたのはオレンジ色の髪の男の子を見て微笑んでいる、男の子と同じ髪色の髪の長い、綺麗な女性だった。

お母さん…かな…
夏里くんはこんな身近な人を亡くしていたんだ…
いつも笑っていて、不安なんて言葉は知らないような彼にこんな辛いことがあったなんて…
どうして気づいてあげられなかったのかな…誰もこの事に。
寄り添ってあげたかった、私が彼の隣で寄り添っていたかった。けどもうそんなことはできない。
気づけなくてごめんね…辛かったよね。

一人で我慢してしまったんだろうな…
なんでだろうね…


このリビングには夏里くんと私の二人だけ。夏里くんの声がやけに響く。

(陽姫)「おかぁさん。」
なんて幼い声を出すんだろう。今にも涙がこぼれそうなそんな弱い声。
私の母親なわけでもない。
悲しくないのに私の目から涙が溢れて止まらない。拭うのも億劫だ。
(陽姫)「おかぁさん。またあの夢を見たんだ。僕が一番分かってるのにね、僕のせいだって。そんなに僕の心を壊したいのかな。

僕、お姫様なんて見つけられなかったよ…………ごめん嘘だ。なくしちゃったんだ、お姫様。…なんでみんないなくなってしまうの。なんで。伝えたいこといっぱいあるのに。俺のせいでいなくなって欲しくないのに。莉海…」


夢は…きっと私が見た不思議な世界のことだろう。やっぱり少年は夏里くんだったのか…
心が痛かった。こんなにも素直な素直すぎる心を持っていて、だからこそ、傷つけられてしまうのかなんて考えてしまう…そしてこんなに切実に、宝物みたいに、お姫さまみたいに、想っている相手がいるんだ。というのを知れた時、とても安心した。誰か、寄り添えるんだね。あなたの心に。そう思ったけど、呼ばれた名前は期待していたものとは違ったものだった。

『莉海』
きっと前までの私なら嬉しくて跳び跳ねまくって床に穴でも開けてしまうかもしれない。そんな憧れの言葉だったが、今はただ苦しいだけだった。そんな…なんで…私もあなたの名前を思いっきり呼んでしまいたいのに。呼べないよ。届かないよ。こんな振り方、ひどい。始めて知ったあなたの弱点は優しさだった。

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朱茶_見る専
朱茶_見る専
ακаηёと仲良くしてくれた人ありがとうございました! リアルが忙しくなってきて負担となってしまった為、小説投稿、プリ小説から離れます。
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