目の前で、ずっと眠っていたヨサンアが、襲撃された瞬間、あの姿に変わった。
防衛本能だろうか。眠ったままだった。
今、起きてくれていたなら、謝ることが出来たのに。
そう思いながらも、ぐったりとしたヨサンアを抱き抱えて逃げようとした。
その時、ようやく気づいた。
青白い光が、優しく周囲を照らしていることに。
その光源は、喰種だった。
赫子が構築する形は神にも仏にも天使にも見える。
きっと、何も知らないままこれを見ていたら、きっと神も預言も信じてしまうだろう。
腕の中から声がした。
腕の中で、目を開けたヨサンと目が合った。
もう、嗚咽しか出なかった。
顔を上げると、青白い光は砂煙を上げながら
人間を薙ぎ払っていた。
ヨサンと生きよう。生き延びて、もっと楽しいことをするんだ。
生きていてよかったと言わせてやる。
足に力が入って、俺たちは青白い光に背を向けた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!