体が浮くくらい。
軽やか。
トンとすれ違う人に肩が当たる。
そんなこと構っていられないくらいの軽やかさ。
僕は引っ張られるように目的の家へ向かう。
僕の肩を掴んだのはミンギだった。
ミンギは少し険しい顔をしていた。
ミンギを連れて、僕は祖母の家へ向かった。
心のざわめき、高まり、それを完全に無視した軽快なチャイムの音。
顔を出したのは母にそっくりな老婆。
自分の財布の中でボロボロになった、昔の家族の幸せな写真を老婆に見せる。
そのまま老婆の家に土足で上がり込んだ。
被害者ヅラの老婆。
まくし立てる言葉を右から左に流す。
発言権を奪い取った。
はぁ、と長いため息がつい漏れ出す。
最初に見せた写真をまた取り出した。
混乱する老婆に、ゆっくり説明をする。
罪から逃れようと必死な老婆はあまりにも醜い。
家の中の仏壇ですら滑稽に見える。
ダメだこりゃ。
それと同時に、こいつが痛い目見ないと気が済まない。
心からそう思った。
写真の子供をトン、と指さす。
僕は、恐怖と困惑に染った顔を見ながら、
悲鳴をあげられる前にその喉を刺した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。