第34話

34.犯罪者
569
2023/06/03 11:20
体が浮くくらい。
軽やか。



トンとすれ違う人に肩が当たる。

そんなこと構っていられないくらいの軽やかさ。

僕は引っ張られるように目的の家へ向かう。
🐤
ユノ。
🐶
あれっ
僕の肩を掴んだのはミンギだった。
🐤
そんな浮かれた顔をしてどこ行くんだよ。
ミンギは少し険しい顔をしていた。
🐶
…一緒に行こう。
ミンギを連れて、僕は祖母の家へ向かった。



心のざわめき、高まり、それを完全に無視した軽快なチャイムの音。


顔を出したのは母にそっくりな老婆。
🐶
こんにちは!喰種捜査官です!
この人知りませんか?
自分の財布の中でボロボロになった、昔の家族の幸せな写真を老婆に見せる。
老婆
あ…あぁ……私の娘です……
🐶
昔、死んだ娘さんですよね?
老婆
…!!あんた達捜査官がしっかりしていたら娘は死ななかったのよ!!今更なに!!
🐶
あーーーーーーっ、はははっ!!!
さすがに冗談やめてくださいよ。
とりあえずお部屋失礼しますねーー
老婆
ちょっ………!!
🐤
あ、じゃあおじゃまします。
そのまま老婆の家に土足で上がり込んだ。




被害者ヅラの老婆。
まくし立てる言葉を右から左に流す。
老婆
そもそもあんた達が!
🐶
うるさいな、
老婆
!!
発言権を奪い取った。
🐶
ずっと僕にあーだこーだ言ってますけど、
あなたが殺したのわかってます?
老婆
はぁっ?!
何言ってるの?!
捕まっていた娘を助けようとしただけよ?!
🐶
嘘つかないでください。
誰が捕まってるなんて言ったんですか。
老婆
あの子が!!
はぁ、と長いため息がつい漏れ出す。
最初に見せた写真をまた取り出した。
🐶
この写真、誰が捕まってるですって?
老婆
…この男と子供は誰よ
🐶
喰種と2人の子供ですが。
老婆
ぐ、喰種って人間を食べる化け物でしょう?
🐶
そうです。
混乱する老婆に、ゆっくり説明をする。
🐶
2人はね、本当に愛し合っていたんです。
でも急にこの喰種が襲われた。
貴方の娘さんが裏切ったんだと思って、
絶望して、娘さんを殺したんです。
老婆
い、いや、愛し合うなんて、嘘よ!
🐶
あなたが何もしなければ、
幸せなままだったんですよ。
老婆
うそよ!!
罪から逃れようと必死な老婆はあまりにも醜い。

家の中の仏壇ですら滑稽に見える。
🐶
娘さんは貴方に、
幸せを願って欲しかっただけなのにね。
老婆
もう!!なんなのよ!!!
責任を擦り付けるための嘘なんでしょう?!
ダメだこりゃ。
それと同時に、こいつが痛い目見ないと気が済まない。
心からそう思った。
🐤
はぁ……
老婆
あんたもちょっとは喋りなさいよ!
なんなのよ!!!
🐤
俺ですか?
ただのこいつのパートナーですが。
🐶
ふふ、パートナー。
老婆
で!あんたはなんでこんなこと言いに来たのよ!!
🐶
え、察し悪いですね。本当に。
写真の子供をトン、と指さす。
🐶
これです。僕。
老婆
…は?
🐶
つまりは復讐。
🐤
僕のご飯でいいですよね。
僕は、恐怖と困惑に染った顔を見ながら、

悲鳴をあげられる前にその喉を刺した。
🐶
死体処理は任せるよ。
🐤
はいはい。
いただきます。

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