一昨日から、何も考えられない。
急に、ミンギとの距離がわからなくなってしまった。
当たり前のように隣にいたミンギ。
僕はそのミンギを、歪んだ欲によって利用しようとしていた。
ずっとずっと考えていた。
本当にこれでいいのだろうか。
自分の心は、やめろと叫んでいる。
でもその声を塞ぐ黒い欲望。
強くなる、強く、もっともっと強く。
そして絶対に何も奪われない僕になる。
そうしたら、僕はきっとあの頃の無力な僕を無かったことにできる。
僕は絶対に奪われない。
手渡されたのは、「クインクス計画」と書かれた封筒。
クインクス。
クインケを植え付けた捜査官。
それを作り出す計画に、僕は名乗りを上げた。
ヨサンが「失敗作」と呼ばれた計画の最終形態。
僕はもっと強くなる。
ほかの捜査官が離れ、ここにいないことを確認してから封を開けると、長々とした身体検査の結果とともに、赤い印。
「適合」
もう、笑いが止まらない。
これだけが欲しかった。
自分が赫子に適合するかだけが。
クインケはここでは埋め込まない。
なんのために赫子を集めたと思ってるんだ。
僕は適合した。
僕はもっと強くなる。
最強に。
喰種よりも、人間よりも強くなる。
何からも、何も奪わせない。
僕のためだけの世界になればいいんだ。
血が熱く、駆け巡るのを感じた。
燃えろ、僕の中のRc細胞。
受け継いだお父さんの血。
祖母だけ、僕の世界にはいらなかったな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。