チャイムギリギリで着席した神谷。
と思ったら、よく見るとワイシャツの第一ボタンが外れていた。
私は後ろのロッカーに入っている裁縫道具を神谷に渡した。
神谷は裁縫道具を広げるが…
まず、糸が通らない。
私は糸通しを出して、手伝ってあげた。
続いてボタンをつけようとする。
が…
またも手伝う。
そしてやっと縫い始めた。
体操着一枚で汗をかいた神谷。
手が滑って縫うのも汚い。
──何で私が…
嬉しそうにYシャツを羽織る神谷。
──ダメだ、やっぱり可愛い…
神谷は不思議そうにこちらを見る。
謝り方…おかしかったかな?
意味がわからなそうに神谷は見つめる。
あれ?神谷って…
──こんなにいい人だったっけ?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。