2時間目…
リレーメンバーが神谷提案の走順で走る。
1人100メートル。トラックの半周ずつ。
アンカーは200メートル。
長距離メンバーの私と一茶は、スタートの合図を出す、タイムを測る、走りを見る、この三つをするためトラックの内側にいる。
トップはクラウチングスタート。
一茶が声を張ってスタートの合図をする。
旗を思いっきり下に振り下げた。
((バシッ!!))
その音と共に吹雪ちゃんは下げている足で力強く地面を踏みつけ、前へ足を出した。
トラックの内側に向けて体を極限まで倒す。
コーナーにかかるとスピードが増す。
そのまま柏木さんにバトンがわたされる。
柏木さんはさっきの吹雪ちゃんより圧倒的に遅いが、それでもクラスの中ではかなり早いメンバーだ。
バトンは府間に。
府間は勢いよく走りだす。
あっという間に神谷の手にバトンがわたった。
細い足。細い体。でも、筋肉だけはある。
どうしよう…かっこいい。
風を切る速さ。切った風が私の顔を覆う。
どうしても見とれてしまう。
ゴールインした神谷。
四人と私は一茶のところに集まる。
校舎へと戻る。まわりには一茶しかいない。
抑えられない気持ちを口にした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。