それからも義勇さんは
ほぼ毎日のようにここへと通ってくれ
ご飯を食べ終わると
いつもお話をしてくれた。
確実に前より仲良くなった
私たち。
時折見せてくれる笑顔が
大好きで
私の話も真剣に聞いてくれ
必ず目を見て話してくれる。
そんな義勇さんに
惹かれつつあった。
そんなある日。
いつも通りの時間帯にお店に来た義勇さん。
席には座らず
私が立っているカウンターの方へと来て
そういわれ
……お店にお客さんもいないし
特にすることもない。
と言われ
すぐさまお父さんに出ることを伝え
着替えを済ませ
義勇さんの元に向かった。
外は少し薄暗く
人通りも少なくなっている。
川にかかる橋を渡っている際
小さなあかりに照らされた
しだれ桜の木が目に留まり
こんな時間に外を歩くことは滅多にないためか
目に映る景色が新鮮で
すごく幸せだった
そして義勇さんは
橋の手すり部分に腕を置き
川と桜を眺めていた
その義勇さんの隣へと行き
私も桜と川のこの綺麗な景色を
目に焼き付けた。
少しの沈黙から
突如義勇さんがそう言ってくれ
嬉しさのあまり顔が緩み
そういうと
フフ、そうか。と私の大好きな笑顔でいい
思わずドキッとしてしまった。
そんなことを言ってくれるもんだから
顔の温度がグッと上がる感じがし
手で顔を仰いでいると
そう言って私の顔を覗きこんできたので
すかさず両手で顔を隠すと
そして私の腕を優しく握った義勇さん。
そしてゆっくり手を退けると
優しく微笑む義勇さんの顔があり
至近距離でそう言われ
またしても顔の温度が上がる
あぁ、恥ずかしい……ッッ
するとフフっと笑った義勇さんは
そのまま私の手を繋いだまま歩き始めた
そしてしばらく手を繋いだまま散歩をし
家まで送ってくれた。
もう離れてしまうと思うと
寂しく感じ
そういうと
次は悲しげに微笑み
そう言い残し
いつもの帰り道とは
逆の方向へ向かって
一瞬にして姿を消した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!