今も時々、夢をみる。
家に帰っている夢。
でもそんな夢は、目が覚めて傷つくだけ。
私はもう、前とは違う。
強く、なったんだ。
私がこの城に来て1年が経った。
陛下はすごく良くしてくださるし、
メイドの友達も沢山できたし、
ここでの生活は悪くない。
まぁ、あの方だけは今も同じだけど。
こんにゃろ、ぶっ〇したろか?
いけない。平常心、平常心。
ソフィア嬢は最初、頭の良い人かと思ったけど違った。
自分は忙しいと言っているくせに、私をいじめる時間はあるみたい。
それに、貴族と王族以外は貧乏人のクズ、と思っている大馬鹿者だ。
そして、ソフィア嬢は陛下のことが好きらしい。
でも、そんなに驚くことではない。
メイドのアリサも、ユリカも陛下のことが好きだ。
陛下は顔がイケメンだし、頭もすごくいいらしいからモテモテだ。
うげっ、来たよユリカ。
ユリカは、とりあえず面倒な女だ。
すぐ泣くし、うるさいし、人によって態度を変える。
こんな感じで、もうほんっと━━━━━━━━━━に面倒くさい。
そして、さらに面倒なのはユリカとアリサが、喧嘩したとき。
まだ、アリサの方がマシだと思う。
まぁでも、2人が喧嘩した時は……。
というように、カレンが収めてくれる。
本当に、カレンはすごい。
最近私には、楽しみがある。
それは……。
ノアは、貴族の家の息子。
だけど次男だから、家を継ぐことはないらしい。
この世界での、長男と次男の扱いは全然違う。
もちろん、家を継ぐ長男が大切にされる。
だからノアは、私なんかと喋っていても叱られない。
………ノアは、私のことが好きらしい。
気持ちは嬉しいけど、私はこの世界の人じゃない。
だから、暮らせして行ければそれだけで十分なんだ。
だから、恋愛までしなくてもいい。
ノアと恋愛する気がないのに、ノアと仲良くしてる自分は卑怯だと思う。
まさに、思わせぶりな行動だ。
こんな自分が心底嫌になる。
だけど……。
ノアは私にとってもう大切な友人なのだ。
失いたくない。
この世界で暮らし始めて1年。
私は、平穏に過ごしていた。
が、そんな暮らしは長くは続かなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!