第38話

第37話
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2021/06/03 10:26
息をするのが、苦しい。
凛
(早く早く…梨央の所に…っ)
時々足がもつれて、転びそうになる。
…止まって休みたい。
でも、そう思う以上に。
凛
(会いたい)
『彼の元へ行かなくては』と言う思いが、私を走らせる。
家の前に着くなり、キーケースから合鍵を取り出して。
慌ただしくドアを開け。
靴を揃える事もせずに、彼の部屋に急ぐ。
凛
(…玄関には、靴あった)
梨央の両親の靴はまだ無かったから、
大方仕事中なのだと思う。
凛
……梨央っ!
ノックする事も忘れて、部屋に飛び込み。
梨央
梨央
えっ、り…凛ちゃん!?どうして…
彼に抱き着くと、心底驚いた様子だった物の。
優しく、抱き締め返してくれた。
梨央
梨央
思ったより、早かったね。おかえり
今日以上に会いたくて仕方なかった日は、きっと無い。
凛
……ただいま
そう言い切れてしまう程、彼の温もりに安心する。
"結婚は好きな人とする物"
____幼い頃。
『大人になったら、結婚してくれる?』
『うん!』
そう両親に教えられた彼が。
私に投げ掛けた、無邪気な質問に。
深く考える事もせず、頷いて居た私。
今となっては、
そのやり取りの重大さを良く理解できて居るけれど。
凛
(梨央は、覚えてるのかな)
彼が覚えて居ないのなら、
この話は無かった事にした方が良い。そう思って。
泣け無しの勇気を振り絞って、
聞いて見ようと口を開きかけた矢先。
凛
…ね、梨…
梨央
梨央
ねぇ、凛ちゃん
梨央の穏やかな声が、私の声と被る。
凛
………ん?
幸い私しか気付いて居ないようだから、
そのまま話を続けて貰った。
梨央
梨央
小さい頃にした約束、覚えてる?
彼の口から出た、"約束"と言う言葉に。
私の肩が揺れて。
彼は、それを『肯定』と判断したらしい。
梨央
梨央
……良かったw
____あぁ。
凛
……!
はるか昔の私達が交わした約束を、果たしたいと思った。
凛
(…………私の、好きな人は、)
この感情が、恋だ。
凛
(……結婚したい人は)
梨央の隣は、いつまでも私の物であって欲しいと思う
この気持ちが、恋だ。
凛
…ねぇ、梨央。
梨央
梨央
なあに、凛ちゃん
たくさん、空回って。
凛
今朝の、返事だけどさ
梨央
梨央
………うん
数え切れない程の回り道をして。
凛
私も、多分。ずっと前から
ようやく気付いた。
凛
……梨央の事が好きだよ
梨央
梨央
………へ?
照れながらも、面と向かって伝えた想い。
凛
沢山困らせちゃって…ごめんね
凛
_梨央…?
そっと彼の様子を窺うと、どうやら放心状態のようで。
梨央
梨央
…………
その時間が長く続き、心配になった頃。
梨央
梨央
……ほんと?
凛
え?
やっと、彼が口を開く。
梨央
梨央
本当に本当に…俺の事、好き?
凛
…うん、好きだよ
少しだけ不安が残った顔で。
梨央
梨央
…夢とか、ドッキリとかじゃ無い?
凛
現実だから安心して笑
……嬉しさを噛み締めるように。
梨央
梨央
そっかぁ…
この瞬間が、何処にも行って欲しくなくて。
凛
…ずっと隣に居るよ
もう一度、しっかり彼を抱き締めた。

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