幼稚園に通っていた頃のように、並んで歩く私達。
変わったのは。
梨央の身長が、私より遥かに大きくなって。
見上げなければ、目が合わなくなった事。
声も、可愛らしさを残しつつ。男の子っぽく変わった事。
たわい無い会話をしながら、笑い合う。
いつでも優しく手を引いてくれる梨央の、
さり気ない優しさが。
私は大好きで。
この言葉が梨央の心を抉っているとは、思いもしなかった。
学校に近付くにつれ、周りも騒がしくなって行く。
梨央の言葉に頷きつつ、辺りを見回すと。
女子生徒が目立つ固まりを見つけた。
皆、同じ方向を見ては。興奮した様子で声を上げて居る。
単純に、興味が湧いた。
好奇心旺盛な私は、一度気になると。
とことん突き止めたくなるタチなのだ。
駆け出そうとした私の腕を、梨央が必死に掴んで来る。
私だって、いつまでも子供じゃないのに。
過保護で心配症な彼は、まだ私を妹扱いしているようだ。
あまりにも真剣に説得して来るので、話だけは聞く。
...断念するとは一言も言っていないけど。
騙す形になった事は、後で謝ろうと決めた。
梨央の手を優し目に解き。
人並みを縫うように抜けて。
その先に居た予想外の人に、大声を上げた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!