時々、夢を見る事がある。
『ねー、りんちゃん』
『ん?どうしたの、梨央』
小さい頃、とても仲の良かった女の子との夢。
『大きくなったらさ、僕の"およめさん"になってくれる?』
『...............凛で良いの?』
『うんっ!りんちゃんが良いの!』
『ふふ、分かった。約束ね?』
『.......やくそく!』
今は手の届かない場所に居る、大好きな幼馴染。
『.......海外に行くって、どういうこと?やくそくは...?』
『ごめんね、梨央、ごめんね.......』
『ずっと、ずっと一緒って言ったのに!!』
『りんちゃんの嘘つき!』
あの日、君を。
『ごめんね、でも...絶対、会いにくるから。
待っててくれる?』
『.......ほんと?』
『うん。ほんと。だって梨央の事、大好きだもん』
嘘つきだと言ってしまった俺を責めなかった彼女は。
『ぼくも...!ぼくも、だいすき!』
今、どこに居るのだろうか。
『嬉しいなあ。.......じゃあ...』
『行っちゃうの?』
『...うん。そろそろ戻らないと怒られちゃう』
『...............分かった』
『ねえ、梨央』
『なあに?』
『またね!』
________________それから10年間。
俺は1度たりとも、彼女を忘れた日は無い。
君の為に格好良くなりたいと思って切った髪も。
弟扱いされたくなくて変えた一人称も。
君が居てくれなきゃ、意味が無いのに。
今日が、11年目。
階下から聞こえる母親の声に返事をして。
カレンダーに付けた印をなぞる。
すっかり着慣れた制服を纏い、リビングで朝食を食べて。
いつ彼女に会っても良いように、念入りに全身を整えた。
__そして。
同じ頃、某空港では。
楽しげに辺りを見回す少女が1人。
彼女が迷いの無い足取りで向かう先には、
今日から通う事になっている高校がある。
_____2人の再会まで、あと1時間。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。