暴言と暴力を受け続けた身体は、既にボロボロで。
対抗する気力も無い私の口から、自嘲的な笑いが零れる。
先程の声の主が、先輩達を押し退ける気配。
自分達に不利な状況を把握したようで、
複数の足音が遠くなって行った。
嘘のように静まり返った倉庫内。
恐る恐る目を開ければ、目の前で藍色の瞳が煌めいて。
恥ずかしさと悔しさで、ギュッと拳を握った。
...見られたくなかったから。こんな情けない所。
出来る事なら先輩には。
私の明るい部分だけ知って居て欲しかった。
せっかく、仲良くなれたのに。
関わると面倒な奴だとか、話すの止めようとか。
そう考えられて居たら、嫌だった。
保健室まで、背中に乗せられ運ばれながら。
小さな声で、問う。
返事を聞くのが怖いけど、でも確認して置きたかった事。
先輩の足が、ピタリと止まる。
振り向いた表情は、とても冷たく感じた。
嫌な汗が、背中に流れる。
気まずい雰囲気のまま保健室に着くと、
生憎。先生は留守にして居て。
そっと近くの椅子に座らせられる。
先輩も椅子を持って来て、向かい合うような形になり。
私は黙って、その言葉を聞く。
違う、とは。否定してあげられなかった。
だって確かに、
人気者の2人と転校生の私が仲良くする事で。
彼らに恋する女の子達が傷付くのは
心のどこかで分かって居たし、見て見ぬフリもした。
嫉妬心から来るイジメも、覚悟して居たのに。
結局、自分1人で解決できなくて。
誰かに助けて貰う事しか、出来ないのだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。