隣で、大勢の人に囲まれる凛ちゃん。
社交的な性格の彼女は、あっという間に人気者になった。
『香寺さんって、どこに留学してたの?』
『英検の1級持ってるってマジ?』
『凛ちゃんって呼んでも良い?仲良くしてね!』
『どこ住み?学校から近い?』
次から次へと出てくるクラスメイトからの質問。
困ったように笑いながらも、丁寧に答えて居て。
優しい所は変わらないんだな、と嬉しくなった。
話すのが楽しくなるような笑顔。
聞き心地の良い声のトーン。
自然と会話が弾むような話し方。
全部、俺が持っていない物。
事前に与えられた情報が無さすぎて、思わず声を上げると。
凛ちゃんはケロッとした顔で言った。
基本的に几帳面だけど、変に抜けている所があって。
でも、憎めない。
言葉の節々から計画性が感じられない事が気になりつつ。
色々聞いて行くと、かなり問題が見えて来た。
通っていた幼稚園のテレビを壊す程の機械音痴なのに。
こんな事を言ったりとか。
全部1人でやろうとしている所。
もっと頼って良いんだよ、と言いかけた時。
『紅橋とどういう関係!?』
『つ、付き合ってる.....とか?』
『幼馴染じゃ無いの?』
しばらく黙って聞いて居たクラスメイトからの、
俺も巻き込んだ質問攻め。
密かに凛ちゃんに想いを寄せている俺は、
『ただの幼馴染』と言うのに抵抗があって。
何と答えるべきか、悩んで居ると。
彼女が抵抗も無く、『幼馴染』だと言って笑った。
異性として全く意識されていない事を再確認し。
気持ちが暗くなって行く。
分かっていたけど、
少しだけ期待してしまっただけに、辛い。
でも、今ここで周りや本人にバレる訳には行かないから。
『大好き』に別の意味も込めながら、笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。