__翌日。
晴れて"恋人"と言う関係に昇格した私達。
手を繋いで登校して居た所を、
早くも同級生に目撃されて居たようで。
その事実を知ったクラスメイトの反応は、様々だった。
全力で驚く人。
驚く事も無く、梨央の肩を叩く人。
…逃がさないよと言うように。
私の肩に手を乗せる人。
いつも話さない人にまで囲まれて。
何だか気疲れしてしまった、放課後。
ある人との約束がある私は、校門前で梨央に手を振る。
不満そうな顔をする彼の言葉に。
笑って、敬礼して見せた。
______。
学校から程近い公園で、待つ事数分。
待ち人は、直ぐに現れた。
肩で息をして居る様子を見ると、
相当急いで来てくれたのが分かって。
慌ててベンチから立ち上がり、頭を下げる。
あんなに急に先輩を置いて帰ったのだから。
ちゃんと、自分の口から話すのが筋だろう。
そう思って先輩を呼び出した物の、
いざとなると何だか緊張してしまって。
唇を噛んだ、その時。
先輩は、私に助け舟を出してくれた。
私が上手く話せない状態である事を察して。
すっかり見慣れた笑顔で、こう言ったのだ。
きっと、本当にアイスが食べたかった訳じゃ無く。
私が心の準備をする時間を、稼いでくれたんだと思う。
そんな恩着せがましさの欠片も無い優しさが、身に染みた。
_____。
各々好きなアイスを持って、再び公園に戻る。
ただし、私は一銭も使って居ない。
レジに持って行こうとした私のアイスも、
先輩がまとめてお会計してくれてしまったから。
口調から優しさが滲み出ている先輩の言葉に頷いて。
シャク、と夏らしい音を立てて。アイスを齧ると。
口に広がって行く甘みに、顔が綻ぶ。
そんな私の顔を見て。先輩はまた、"あの顔"をした。
優し過ぎて心配になる、この人は。
その胸の中に。
……どんな想いを隠しているのだろうか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!