最初から最後まで、接戦を繰り広げた体育祭。
激しい攻防の末、見事勝利を収めた私たち赤組メンバーは。
揃いも揃って、大人数で打ち上げへと向かって居た。
クラスメイトの話に耳を傾けながら、
スマホの通知を確認すると。
体育祭の昼休憩が終わった頃に掛かって来て居た着信。
その着信元は...今もロサンゼルスで暮らす、母の携帯だ。
日本とロサンゼルスの時差は、
今はサマータイム中なので、16時間。
サマータイムは、日の出が早く、
昼間の時間が長い時期の日光を有効活用する為、
国の標準時刻を早める制度の事だ。
しかも、サマータイムの時期は決まって居て。
3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までが、
ロサンゼルスのサマータイム。
各地点で違うから、私も覚えるのに時間を掛けた物だった。
自分が日本に帰って来たばかりの頃の
時差ボケを思い出して、苦笑すると。
少し離れた所で、梨央が私に向かって呼び掛ける。
どうやら考え事に、のめり込み過ぎて居たようで。
彼の周りに、先程まで騒いで居たクラスメイトの姿は無い。
急いで駆け寄りながら、ふと空を仰ぐ。
正直この電話に、良い予感はして居ないが。
今は、打ち上げだ。
まだ文句を言い続ける梨央を、笑顔で宥め。
グイグイと背中を押して、皆の待つ席に向かう。
私達が来ると、クラスメイトは一斉に声を上げて。
謝罪しつつ、空けてもらった席に2人で座ると。
ボソッと隣から聞こえた陰口。
全員と仲良くしたいと言う私の願いは。
到底、叶いそうもなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。