第36話

第35話 凛side・梨央side
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2021/04/22 14:01
凛
じゃあ先輩、また!
聡海
聡海
うん、また。気を付けて帰ってね
桃谷先輩と校門前で別れて。
梨央
梨央
…じゃあ帰ろっか、凛ちゃん
凛
うん!帰ろ!お腹空いた…
いつも通り、梨央と一緒に帰路に着く。
梨央
梨央
……
違和感に気付いたのは、歩き始めて直ぐの事。
凛
(…全然、相槌打ってくれないな。
と言うか…口数が少ない?)
どんな話にだって楽しそうに頷いたりしてくれる彼が。
今日は、やけに静かで。
チラリと表情を窺えば、何処か遠くを見て居る様だった。
凛
……梨央?
何となく不安になって、名前を呼んで見る。
誰よりも多く呼んで来た自信のある、彼の名前を。
凛
(梨央なら、きっと返事してくれる)
…でも、返って来たのは。
優しくて暖かい『なぁに?』と言う声では無く。
心の芯が一瞬で冷やされる視線。
凛
………っ
いつもの彼が何処にも居ない事が、ただ怖くて。息を呑む。
数秒後、ハッとしたように目を瞬かせた彼に。
梨央
梨央
ご、ごめんね凛ちゃん…!ボーッとしてた…
慌てて謝られたけれど。
凛
…っ大丈夫だよ!
自分の強ばった顔が、緩む事は無かった。
…………………………。
〈梨央side〉
何処かで、『大丈夫だろう』と高を括って居た心に。
梨央
梨央
(…失敗だ)
今日、厳しい現実を突き付けられたような気がした。
梨央
梨央
(どっちがお似合いか、なんて…)
女の子にしては身長が高い凛ちゃんに。
身長が伸びない事に悩む俺と。
背も高くて、スタイルも抜群な聡海くん。
梨央
梨央
(…認めたくないけど)
固く目を瞑れば、笑い合う2人の姿を思い出してしまって。
今頃、デートの準備でもして居るのかな、なんて。
窓越しの彼女の部屋に視線を送る。
梨央
梨央
……凛ちゃん
『好きだよ』と、言葉にしなくても。
いつかは伝わってくれると思って居た、過去の自分。
梨央
梨央
…俺が変わらなくちゃ、ダメだよね
誰に向けた訳でも無い呟きは。自室の壁に、消えて行った。
_______。
そして、土曜日。
皮肉にも外は快晴で、絶好のデート日和だ。
凛
『梨央ー!!見て見て!』
ついさっき、フラッとウチにやって来た凛ちゃんは。
可愛らしいワンピースを着て、楽しそうに笑って居て。
凛
『…似合う、かな?』
梨央
梨央
『…うん。すっごく似合ってるよ』
 心が痛まなかったかと問われれば、嘘になってしまうけど。
何もしない癖に、誰かを妬むのは辞めると決めたから。
今日は大人しく、見送ろうとしたのに。
凛
…じゃあ、行ってきます!
…無理だった。
梨央
梨央
……っ凛ちゃん!
…耐えられなかった。
凛
え、梨央…どうし……
扉の向こうに消えかけた彼女の腕を掴んで、引き寄せる。
梨央
梨央
……ないで
凛
…ん?
情けないほど震える声で、ようやく伝えられた本音。
梨央
梨央
行かないでよ…凛ちゃん…
凛
え……
酷く驚いた様子で、目を見開く彼女に。
梨央
梨央
…好きだよ
薄く微笑んで、想いを告げた。

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