第7話

#06※少し長めです
46
2020/06/25 12:57
☆夕燈side☆

~月影邸・リビング~
夕燈
夕燈
ふぅ……もう朝か。また徹夜してしまった……〈欠伸をする。〉
俺の名前は夕燈ゆうひ。種族は神狐かみきつねで、妖怪陣営、月影を纏める主だ。

神狐の一族は代々、妖怪達の頂点に立って纏めあげてきた種族で、100年くらい前に俺が叔父さんから主の座を継いだんだ。

まぁ、個人的に主の座を継ぐのは妹の朝姫が良かったんじゃないかなって思うんだが。

朝姫は俺よりも妖力が高いし、質も良いし、何より皆から愛されているし……“主”としての器もあるしな。

それでも俺は長男だから、跡を継がなければいけなかった。俺には似合わないし、俺の理想は主は朝姫で、俺は朝姫をサポートする側近か秘書で良かったんだ。

でも、現実はその逆。はぁ……現実って甘くないよな。俺は相応しくないと思うけど、叔父さんだけでない、父さんと母さんの願いなら途中で投げ出す訳にはいかない。

最後まで、精一杯やり遂げるしかない。それにしても、あいつの一族の情報はなかなか掴めない。

しかも、主の仕事もあるから今日で何日目の徹夜だろうか。やばい……頭が回らない。

_____________________
夕燈
夕燈
はぁ……
雪乃
雪乃
夕燈様、お疲れ様です。少し休憩なさっては如何でしょうか?〈コーヒーを淹れたカップをテーブルに置く。〉
夕燈
夕燈
雪か。ありがとう。〈小さく笑い、コーヒーを飲む。〉
雪乃
雪乃
どういたしまして。〈小さく笑う。〉
せつな
せつな
おっはよ~♪ゆきのんに夕燈っち!〈ニコニコしながら、部屋に入って来る。〉
雪乃
雪乃
おはようございます、せつな様。
夕燈
夕燈
せつなか。おはよう。
せつな
せつな
あれぇ?夕燈っち、また徹夜ぁ?
夕燈
夕燈
あぁ。
せつな
せつな
あんまり徹夜してると体壊しちゃうよ?
夕燈
夕燈
………仕方ないだろ。仕事とか情報集めとかやらなくちゃいけない事が山ずみなんだから。
せつな
せつな
そっかぁ……でもでも、やりすぎちゃだめだからね!姫ちゃんに心配かけちゃうし。
夕燈
夕燈
………
せつな
せつな
姫ちゃんはたった1人の家族なんでしょ?大切にしなくちゃだよ?
夕燈
夕燈
あぁ。………って、叔父さん、歳はだいぶとったけどまだ生きてるから。
せつな
せつな
あ、そう言えば、時雨さん(叔父)生きてたんだっけ。忘れてたよ~。
夕燈
夕燈
忘れるな……叔父さんに失礼だろ。〈呆れている。〉
せつな
せつな
あはは~。ごめんごめん!って事は家族は夕燈っちを合わせて3人かぁ。
夕燈
夕燈
あぁ。神狐の一族は沢山いるけど、肉親は朝姫と叔父さんだけだからな。
せつな
せつな
そっかぁ……それより、今度から徹夜しちゃだめだからね!姫ちゃんが心配しちゃうから。
夕燈
夕燈
…………分かった。
せつな
せつな
ほんとに分かってるのぉ~~?〈ジト目で夕燈を見る。〉
夕燈
夕燈
はいはい。分かってるから。
せつな
せつな
“はい”は1回でしょ!夕燈っち!
夕燈
夕燈
………はい。(なんで俺、せつなに説教されてるんだろう……)
せつな
せつな
分かればよろしぃ!
朝姫
朝姫
おはようございます。
椿莎
椿莎
はよ。
_____________________

俺とせつながそんなやり取りをしていると朝姫と椿莎がやって来た。
夕燈
夕燈
朝姫、椿莎、おはよう。
椿莎
椿莎
おはよう。夕燈様。
朝姫
朝姫
おはようございます、お兄様。
夕燈
夕燈
あぁ。2人も元気そうで良かった。〈小さく笑う。〉
雪乃
雪乃
さて、皆様揃いましたし、朝ごはんに致しましょう。
夕燈
夕燈
そうだな。
せつな
せつな
あっさごっは〜ん♪〈ニコニコしている。〉
椿莎
椿莎
メニュー、何かなぁ……
朝姫
朝姫
楽しみです♪〈ニコニコしている。〉
しばらくして……

_____________________

俺は朝ごはんを食べ終えて、中庭の訓練所に来た。
夕燈
夕燈
仕事も大事だが、力を磨かないとな。
夕燈
夕燈
さてと……天狐雨・焔てんきあめ   ほむら
天狐雨・焔は敵の頭上に炎の雨を降らせる技です。
夕燈
夕燈
問題なしだな。次は……天狐雨・時雨しぐれ
天狐雨・時雨は焔の氷バージョンです。
夕燈
夕燈
こっちも問題なしか。
椿莎
椿莎
あれ?夕燈様。どしたの?
夕燈
夕燈
椿莎か。見ての通り、特訓だよ。
椿莎
椿莎
そっかぁ。夕燈様くらいの実力があれば、特訓とかしないでいいんじゃないの?
夕燈
夕燈
あのなぁ……どんなに強くても、力は磨かなくちゃ錆び付くんだぞ。〈呆れている。〉
椿莎
椿莎
やだなぁ、冗談ですよ。特訓が大事なのは分かってます。
夕燈
夕燈
……………なら良いけどな。
椿莎
椿莎
じゃあ、夕燈様にお願いがあるんですけど、いいですか?
夕燈
夕燈
お願い?良いけど、俺に出来る範囲内でだぞ。
椿莎
椿莎
ちょっと、俺と模擬戦して欲しくて。
夕燈
夕燈
模擬戦?……戦いが嫌いなお前が自ら模擬戦を頼むなんて……はっ!なんか可笑しい病気にでも侵されてるのか!?
椿莎
椿莎
いや……俺はいたって正常なんですけど。それに、強くなりたいと思うのはいけない事ですか?
夕燈
夕燈
いや……いけなくはないが……
椿莎
椿莎
ん、お返事は?
夕燈
夕燈
………あぁ。分かった。受けよう。
椿莎
椿莎
ありがとう。
夕燈
夕燈
………(模擬戦かぁ……俺と椿莎は相性が良くないんだよな……大体の攻撃は宵闇時雨・碧で防がれるだろうし……)
椿莎
椿莎
来ないなら、こっちからいくからね?宵闇時雨・ざん
宵闇時雨・斬は刃のように鋭くした自身の羽をいくつも相手に向けて放つ技です。
夕燈
夕燈
っ……〈素早くかわすが、いくつかの羽が頬を掠めかす、血が出る。〉
夕燈
夕燈
椿莎は戦いが嫌いな割に、攻撃技の威力は高いよな。〈頬の血を拭う。〉
椿莎
椿莎
お褒め頂きありがとうございます。な~んてね?〈再び、羽を飛ばす。〉
夕燈
夕燈
やられっぱなしじゃいられないからな……氷壁ひょうへき!からの……天狐雨・焔!〈氷の壁を作り出し、羽を弾き、天狐雨・焔を放つ。〉
椿莎
椿莎
っとぉ~……流石、夕燈様だね?〈宵闇時雨・碧で攻撃が少し炎が当たる。〉
夕燈
夕燈
そうか?まだまだ行くぞ?
椿莎
椿莎
望むところだよ!
しばらくして……

_____________________

俺と椿莎の模擬戦は引き分けで終わった。

すると、朝姫がティーセットを持ってやって来る。
朝姫
朝姫
お兄様~、椿莎君~!お茶にしませんか?〈ニコニコしている。〉
椿莎
椿莎
ん、姫、ありがとね。〈小さく笑う。〉
夕燈
夕燈
朝姫、ありがとう。〈ニコッと笑う。〉
朝姫
朝姫
はい♪って……お兄様、ほっぺた……
夕燈
夕燈
あぁ……さっきまで模擬戦してたからな……
椿莎
椿莎
俺の羽、2枚くらい当たってたしね。
朝姫
朝姫
今治しますから……
夕燈
夕燈
分かった。〈その場にしゃがみこむ。〉
朝姫
朝姫
永遠の愛エターナル・ラブ〈夕燈の頬に手を当て、傷を治す。〉
夕燈
夕燈
ありがとう。朝姫。〈にっこりと笑う。〉
朝姫
朝姫
はい、お兄様。〈ニコニコしている。〉
椿莎
椿莎
………(夕燈様のあんな笑顔……初めて見たかも。)〈少し驚いている。〉
夕燈
夕燈
お茶にするか。
朝姫
朝姫
はい。
椿莎
椿莎
ん。
_____________________

この後、俺達はリビングに戻り、お茶をした。こんな平和が続くように頑張らないとな。

☆つづく☆

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