それから気づけば
胡蝶の屋敷へと運ばれていた。
こんな所でじっとしてちゃぁ
意味ねぇ。
体が少し疼く気がするが
なんとか立ち上がり
自分の屋敷へと戻ろうとすると
背を向けてる側のベッドから
女の声がした
まさか人なんざ
居るとは思ってなかった。
語尾にかけて声が小さくなる女。
柱以外の女で
俺に構う奴なんかいるんだなぁ。
月明かりが綺麗に奴を照らしていた
うつむき加減で顔のところだけが暗く
ちょうど見えなかったが
その顔を上げて
俺をじっと見つめてきた。
あ……
もしかしてこいつ……
今柱の中で話している
新人隊士のやつか……??
呼吸が使えるって……噂の
それを確認すべく
俺は女の元へ歩み寄り
顔をちゃんと見れるよう
奴と同じ高さになるようしゃがみ込んだ
そう聞くと
一瞬ビクッとして
俺から少し目線を外し
そう言い終わるとまたちらっと俺の方を見た。
緊張しているのか
布団を強く握っていた。
そういうと
パッと目を開き
俺の方を見つめ
そう言い、少し頭を下げた。
何故か少し顔が緩んだ感じがしたが
呼吸が使えるからと言って
十二鬼月を倒せるかといえばそうじゃない。
今まで幾度となく鬼たちに殺されてきた
新人隊士達は
中には呼吸が使える奴もいた。
そいつらは呼吸が使えるからと
鬼を甘く見ていたがゆえ
殺された奴もいる。
だからこそ。
と思い伝えたのだが
女は
そう言い
悲しげに微笑んだ後
泣き始めた。
きつく言いすぎたのか?
そんなに言ったつもりはなかったんだが
女は難しい
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。