第4話

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2020/01/27 07:35
呼び止めてから

こっちを向いたまま動かない不死川さん。

時がすごく長く感じる……





すると

ゆっくり

私のベッドの横へ歩いてくると

私の顔の位置に合わすようしゃがみこみ

不死川 実弥
不死川 実弥
お前……

新人隊士で

呼吸が使えるって噂の……
あなた

あ、え……はい!!

あなたと言います。
17歳です。

呼吸は、桜の呼吸が使えます…

まさか

あの不死川さんが

私のことを知っているとは……

恐縮だ……
不死川 実弥
不死川 実弥
お前、柱の中じゃぁ
結構話題になってんぞ。
そう教えて頂き

また更に

心が縮こまる感じがした……

柱の皆さんまでもが……

私を知っている……のですね
あなた

大変恐縮です……

不死川 実弥
不死川 実弥
まぁ呼吸が使えるからって
調子のんじゃねぇぞ
あなた

そ、そそそそそれはもちろん、
わかっています。

今だって十二鬼月でも無い鬼で
呼吸が使えるのに
ここまで負傷してしまっている
自分が恥ずかしいです。

全然私はまだ強くなれていません。

確かに考えてみれば

呼吸が使えるのに

ここまでボロボロにされてたら

十二鬼月と遭遇した時

今の私では勝てないだろう。


この不死川さんだって負傷しているんだから。


もっと、鍛錬しくてはならない。
そう考えているうちに

ポロポロと涙が溢れてきた。




私は

小さい頃から母と二人で暮らしていた。

父は私が産まれる前に

病気でなくなったらしい。



母と2人でも
幸せで毎日が楽しかった。


いつも笑顔の母が大好きだった。








そんなある日

私は最愛の母を鬼に喰われた。




襖の隙間からその光景を見た時

身動きが取れなかった。


真っ赤に染る母


何も出来なかった私。



それから私は何とか足を動かし逃げ出した。

母を助けられなかった罪悪感で
押し潰れそうになった。



なんとかして、母の仇をとりたい。

そして


絶対鬼を滅殺しこの世を平和な世にすると

心に決め鬼殺隊へと入ったはずなのに…


それなのに

今の自分では仇など取れない。
不死川 実弥
不死川 実弥
おい、お前
なんで泣いてんだァ……
少し困惑したような感じの不死川さん。

ダメだ。


なに、泣いてんだ、自分。

変に気を使わせてしまい、不甲斐ない


しっかりしなくては

この先、何も乗り越えられなくなる
あなた

す、すみません。

このような姿を見せてしまい

申し訳ございません。

ぐっと袖で涙を拭うと

ポンっと手が私の頭の上に乗り
不死川 実弥
不死川 実弥
そんな強く擦ると
目が赤くなんぞぉ

顔を上げてみると

不死川さんはそっぽ向いてたけど

あまりもの優しさになお

涙が溢れた
あなた

す、すみません。

不死川 実弥
不死川 実弥
いいから
泣きやめやぁ。
あなた

ありがとうございます

不死川 実弥
不死川 実弥
下の奴らは
こうしたら泣き止んでたからよぉ。

泣き虫なお前見てると
俺のとこのどうしょうもねぇ
バカ弟を思い出すなぁ。
そう話した不死川さんは

優しく頭をポンポンしてくれながら

弟の話をしてくれた。


その時の不死川さんの顔は

普段では想像できないくらいの

優しい笑顔だった。

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