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第1話

私がお嬢様!?
──9月。

夏の暑さがまだ残る秋。
親戚のおばさん
親戚のおばさん
可哀そうにね、あなたちゃん
親戚のおじさん
親戚のおじさん
お母さん、まだ若いのに
交通事故だってな。
気の毒に……
あなた

(お母さん……)

享年40歳。

私を女手ひとつで育ててくれた
お母さんは交通事故で他界した。

警察の話では車の運転中に過労で
意識がなくなったのが原因らしい。
あなた

(しかも、他に被害者を出さなくて
よかったですねって……)

思い出しただけで怒りがわく。
あなた

(お母さんは好きで事故を
起こしたわけじゃないのに……)

私はこれから親戚の家に
引き取られることになっている。
あなた

(ちゃんとやっていけるのかな)

不安に思いながらも、
私は葬式の喪主を務めるのだった。

***
あなた

はあ……

葬式を終えて、私は葬儀場を出る。
あなた

(お母さんが死んでから、
悲しむ暇もないな)

どっと疲労感に襲われながら、
帰路につこうとしたとき──。

目の前にスーッと、
静かに黒塗りの高級車が停まる。
あなた

(これってリムジン!?)

口を開けてぽかんとしていると、
運転席から執事服のようなものを
身につけた男性が出てきた。

そして、私に一礼すると、
後部座席のドアを開ける。
執事
執事
…………
すると中から、スーツを着た
40代くらいの男性が出てきた。
???
???
葬儀は終わってしまったか
あなた

え、はい……ちょっと前に。
もしかして、お母さんの知り合いの
方ですか?

あなた

(誰だろう、職場の人とか?
でも、それならさっき、
まとまって葬式に来てたし……)

警戒していると、
男性が私の前で立ち止まる。
???
???
私は鷹宮五郎たかみや ごろう
鷹宮財閥の社長だ。そして──
含みのある言い方に、
ごくりと唾を飲み込む。
お父さん
お父さん
お前の父親でもある
あなた

は……? 父、親?

あなた

(お父さんは子供の頃に死んだって、
お母さんは言ってたけど……)

あなた

な、なにかの間違いじゃないですか?

お父さん
お父さん
それはない。密かに
お前のことを調べさせてもらった
あなた

調べさせてもらったって……

執事
執事
疑うのも無理ありませんね。
ですが、五郎様は鷹宮財閥の社長。
身元はしっかりしています
あなた

あの……あなたは?

執事
執事
名乗り遅れて
申し訳ございません
執事は恭しく私にお辞儀をする。
高臣
高臣
私は鷹宮財閥で執事長を
務めております。高臣たかおみと申します
あなた

高臣……さん

高臣
高臣
高臣で構いません。
これからなんなりと、
御用をお申し付けください
あなた

(これからなんなりとって……。
もうお会いすることはないと
思いますけど)

お父さん
お父さん
話だけでも、聞いてほしい
深々と頭を下げられてしまい、
私は促されるようにして、
渋々リムジンに乗るのだった。

***
お父さん
お父さん
私はお前の母親……
貴美子きみこと高校時代から
恋仲だったんだ
あなた

高校生のときから……

執事の高臣さ……高臣の運転する
リムジンの中。

お父さんがお母さんとの
馴れ初めを話してくれる。
お父さん
お父さん
私が通っていた宝城ほうじょう学園は
全国の御曹司や芸術家一族、
とにかく名立たる面々が通う
由緒ある学園のひとつでね
お父さん
お父さん
そこに、お前のお母さんは
主席で入学したんだ
あなた

主席……頭よかったんだ、
お母さん

お父さん
お父さん
というよりは、
完全に努力の賜物だな
お父さん
お父さん
貴美子の家は裕福ではなかったらしい。
でも、宝城学園は主席で入学すると
3年間学費が免除される
あなた

(そうだったんだ。
すごいな、お母さん。
にしても親の親の代からの
貧乏だなんて……トホホ)

お父さん
お父さん
彼女の努力家なところに惹かれた。
だが、私の両親は家柄にこだわる
人間でね
お父さん
お父さん
高校を卒業してから数年後、
正式に父の仕事の後を継ぐことに
なって、喜美子と結婚したいと
両親に伝えたんだが……。
家柄が釣り合わないからと、
認めてもらえなかった
あなた

そうだったんですね……

お父さん
お父さん
それでも私は貴美子を
諦める気はなかった。
でも、貴美子は姿を消してしまってね
あなた

えっ

お父さん
お父さん
行方をくらました貴美子を
捜索している途中で、
私と付き合っているときに、
お前を身ごもっていたことがわかった
お父さんの目が悲しげに伏せられる。
お父さん
お父さん
ようやくお前たちを
見つけたときに、
俺は迷ってしまったんだ
あなた

迷う?

お父さん
お父さん
貴美子はもう私に関わりたくないから
家を出たんじゃないか、だったら
もう関わるべきじゃないってな
あなた

お母さんは、
簡単に人の縁を断ち切るような
人じゃないです

これだけは迷いなくきっぱりと
断言できる。
あなた

(だってお母さんは……)

『大切な人は、自分のなにを手放し、
差し出したとしても守らなきゃだめよ』

そう口癖のように言っていたから。
あなた

だから、きっと……。
お父さんのためを思って
離れたんだと思います

お父さん
お父さん
ああ、そうだな。
自分が相手じゃ、私が幸せになれないと
思ったのかもしれない。
そんなはずないのにな
お父さんの目が潤んでいた。

胸がきゅっとなって、
途端にもうお母さんがいないことを
実感する。
お父さん
お父さん
私は後悔している。
貴美子が死ぬ前に、
どうして会いに行かなかったんだと。
だからせめて……
お父さんが私の肩を掴み、
強い意思を宿したような瞳で見つめてくる。
お父さん
お父さん
お前だけでも幸せにしたいと、
こうして迎えに来たんだ。
もし望んでくれるのなら、
私と一緒に暮らしてほしい
あなた

(不思議……今日会ったばかりなのにな)

お父さんだと名乗る目の前の男性に、
気を許している自分がいる。

私はこれから、特にこれまで繋がりもなかった
親戚のところに引き取られる予定だ。
あなた

(親戚は優しい人たちだって
聞いてるけど、やっぱり私は
よその子なわけで……)

肩身の狭い思いをすることは、
目に見えていた。
あなた

(なら、お母さんが愛した人を信じたい。
お父さんのそばにいたほうが、
きっと幸せだよね)

あなた

お母さんとどういうふうに
過ごしたのか、これからたくさん
話を聞かせてください

お父さん
お父さん
……! それはつまり……
あなた

迎えに来てくれて、
ありがとうございます。
一緒にいさせてください

お父さん
お父さん
ああ、ああ……っ、
ありがとう
私を抱きしめて泣きだすお父さん。

その背に腕を回し、
私は失ったはずの家族のぬくもりを
感じるのだった。

***

葬式から1週間が経った。

お父さんに連れられてやってきたのは、
さすが財閥の社長!と言いたくなるほど大きなお邸。

部屋からそこに置かれたベッドまで、
とにかく大きくて広いこの家に、
いまだに慣れない。
お父さん
お父さん
あなた、今日から
宝城学園に通うんだったな
ふたりで使うには長くて広すぎる
ダイニングテーブル。

そんな食事の席で、
お父さんがフォークとナイフを
持つ手を止めて尋ねてくる。
あなた

あ、うん!

私たちは離れていた時間を埋めるために、
家族らしくため口で
話すことになったのだけれど……。
あなた

(まだ慣れないな)

お父さん
お父さん
編入試験、全教科満点だった
らしいな。お母さんと同じ、
努力家だな、あなたは
あなた

お母さんと同じ……うれしい、
ありがとう

お父さん
お父さん
ダンスにマナー、
財閥の令嬢として必要なものは
学園の授業で教えてもらえるだろう
あなた

(財閥の令嬢かー……。
全然実感わかないな)

とはいえ、もう親戚の家に行くことを
断ってしまっている。

私にはもう、ここしか身寄りがない。
あなた

(この家に引き取ってもらったんだし、
できるだけ期待に応えたいけど……
荷が重いな)

***

執事の高臣の運転するリムジンで
私は学園にやってきた。
高臣
高臣
お気をつけて、お嬢様
あなた

高臣、今日はこのまま
お邸にリターンするって選択肢は……

高臣
高臣
お嬢様、緊張するでしょうが、
頑張っていってらっしゃいませ
あなた

うう……

あなた

(高臣の笑顔が眩しい)

あなた

じゃあ、行ってきます……

渋々校舎に入り、
真っ先に職員室に向かう。

そして、担任の先生に挨拶をしていると──。
???
失礼します