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第10話

甘いクレープで縮まる距離
柴園寺 晴
柴園寺 晴
安上がりなやつ。
まあ、お前があれでいいって
言うんならいいか
柴園寺くんはお店を出ると、
ブラックカードを片手に、
ランチワゴンに向かう。
あなた

(あ、ランチワゴンで
クレジットカードって
使えない気が……)

案の定、柴園寺くんは解せないという顔で
私を見てくる。

私はため息をつきながら、
彼の隣に並んだ。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
現金を出せって言われたぞ。
今時、現金持ち歩いてるやつ
いるのか?
あなた

あのね、大半の庶民は
現金を持ち歩いてるよ

柴園寺 晴
柴園寺 晴
嘘だろ!?
あなた

ここで私が嘘をついて、
なんのメリットがあるのかな

カルチャーショックを受けている柴園寺くんに
構わず、私はクレープの値段を見る。
あなた

今日は9がつく日だから、
クレープの日で安いんだって

柴園寺 晴
柴園寺 晴
クレープひとつ500円……。
そんな金額の食べ物、
この世にあるんだな
あなた

これを機に学んでね。
クレジットカードが使えるところ
ばかりじゃないんだよ

柴園寺 晴
柴園寺 晴
偉そうに……ムカつく
あなた

もう、子供じゃないんだから。
今日は、ありがたい生活費の中から、
クレープ代は出しましょう

私はお財布から500円玉を二枚出す。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
俺、いらねえ
あなた

(あー……拗ねちゃったかー)

あなた

柴園寺くんの気持ちはうれしいよ?
今日のこと、柴園寺くんの助けに
なれたんだって、わかったし

頭を過ぎるのは、生徒会の仕事で
柴園寺くんのファンクラブの女の子たちの
暴走とクラスの男子の不満を宥めたときのこと。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
勘違いすんな。
俺は、無償の優しさとか
信じてねえから
柴園寺くんはさっさとひとりで
リムジンに戻ろうとする。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
これはただ、
借りを返したかっただけだ。
あとから、あのとき助けただろって、
脅されないためにな
私は慌ててクレープをひとつ買い、
彼の手を掴んだ。
あなた

借りを返したいなら、
もう少し私に付き合って?

柴園寺 晴
柴園寺 晴
は?
どういう意味だよ?と言いたげな顔をする
柴園寺くんを連れて、
一緒に公園のベンチに座る。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
リムジンの中で食えばいいだろ。
なんでわざわざ外で……
あなた

外だと、おいしさが倍増するんだよ。
『イチゴバニラクレープ』、
ひと口食べてみる?

柴園寺 晴
柴園寺 晴
そんな質素な食いもん、
いらねえ。絶対、
俺の口に合わねえし
あなた

じゃ、遠慮くなくひとりで
いただきます

パクっとクレープにかじりつくと、
舌の上でバニラの甘さとイチゴの酸味が
絶妙なバランスで広がる。
あなた

んうーっ、おいひいっ

柴園寺くんが隣にいることも忘れて、
パクパクと夢中で食べていると、
ふいに視線を感じた。
あなた

(ん?)

顔を上げれば、柴園寺くんが私の手元にある
クレープを見てうずうずしている。
あなた

(食べたいんだ。素直じゃないなあ)

あなた

庶民の生活を知るのも、
修行の一環だと思うんだよね

あなた

(柴園寺くんは修行なんて律儀に
やってられるか!って言いそうだけど……
今回はのってくる自信がある)

柴園寺 晴
柴園寺 晴
ぐっ……
あなた

(だってこの顔!
ご馳走を前にした
ワンちゃんみたいだし!)

笑いを堪えながら
紫園寺くんの出方を待っていると──。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
それなら仕方ないな。
ほら、寄越せよ
あなた

えっ

柴園寺くんはクレープを持つ私の手を
上から掴んで、自分のほうへ引き寄せた。

そして、私の手からクレープにかじりつく。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
ん、まあまあだな
ぺろりと唇を舐める柴園寺くんに、
鼓動が跳ねた。
あなた

(こういうささいな仕草すら、
かっこいいんだよな)

不覚にも見惚れていると、
柴園寺くんは急に私から生活費の入った
お財布を奪って、すくっと立ち上がる。

どこに行くかと思ったら、
ちゃっかり自分の分のクレープを買っていた。
あなた

(よっぽど気に入ったんだな、
クレープ)

隣に戻ってきた柴園寺くんは、
クレープを食べ慣れていないせいか、
口の周りにクリームをたっぷりつけている。
あなた

もう、本当に子供みたいだなあ

私は笑いながら、
手で柴園寺くんの口元を拭ってあげた。
柴園寺 晴
柴園寺 晴
なっ……