私達は他愛もない話をしていた。といっても、主に私と美緒が話して偶に柳田が入ってくるというだけだが。
隼人が遥斗の方を見つめる。見えないはずなのに、真っ直ぐと見つめている。
少しの緊張が走る。
一瞬、寂しそうな表情をした遥斗。
美緒が首を横にふる。
美緒の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちて、テーブルに落ちる。
美緒の顔が一瞬で青ざめた。左手首を強く握っている。
苦しそうに言う遥斗の顔は、怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。
遥斗はどこか遠くを見ているようだった。その目からは、何も感情が読み取れない。
隼人はどこまでも、真っ直ぐな瞳で美緒を見つめる。
遥斗が目を丸くして隼人を見つめる。
少し、緊張しているのかもしれない。心拍が早くなる。
遥斗が少しはにかんで笑う。
私は遥斗の言葉を紡いだ。彼が、死んでからもずっと伝えたかった言葉を。
これで、二人が前に進めるのだろうか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。