プリ小説

第12話

12歩目
風間美緒
本当、由良さんって面白いですね
由良
そ、そうですか?
    私達は他愛もない話をしていた。といっても、主に私と美緒が話して偶に柳田が入ってくるというだけだが。
風間美緒
でも、まさか遥斗が縁で由良さんと出会うなんてね
柳田昌浩
確かに不思議な縁ですよね
由良
(確かにそうなのかもしれない。私も遥斗さんがいなかったら、柏木くんにも美織さん、柳田さんと出会ってなかったよね)
隼人
そろそろ、本題に入ったらどうなんだ?何か、伝えたいことがあるんだろ?
    隼人が遥斗の方を見つめる。見えないはずなのに、真っ直ぐと見つめている。
木田遥斗
……そうだな
    少しの緊張が走る。
風間美緒
遥斗は、私に伝えたいことがあるんだよね……
    一瞬、寂しそうな表情をした遥斗。
木田遥斗
由良、頼む
由良
うん。分かってます
由良&遥斗
美緒、ごめん。今更になって会いにきたりして
    美緒が首を横にふる。
由良&遥斗
俺、逃げてたんだ。三年前、俺が死んで泣いている美緒を見るのが辛くて逃げたんだ
風間美緒
ごめんね。私、泣き虫だから。遥斗は優しいから、私のこと心残りになっちゃうよね
    美緒の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちて、テーブルに落ちる。
由良&遥斗
美緒……俺、優しくなんかないよ。俺は、本当に最低な奴なんだよ……
由良
(遥斗さん……?)
風間美緒
どうしたの?どういうことなの?
由良&遥斗
美緒が俺の後を追って自殺しようとした時……
    美緒の顔が一瞬で青ざめた。左手首を強く握っている。
由良&遥斗
あの時俺、少し嬉しかった……
   苦しそうに言う遥斗の顔は、怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。
由良&遥斗
勿論、美緒が自殺しようとしてたのは悲しかった。でも、心の何処かで喜んでいる俺がいたんだ。美緒とまた一緒にいられると嬉しかったんだ
風間美緒
じゃあ……死ねなかった私を憎んでる?
木田遥斗
え、
由良
(どうしよう……どうして、否定しないの?きっと遥斗さんはそんなこと思ってないのにどうして?)
   遥斗はどこか遠くを見ているようだった。その目からは、何も感情が読み取れない。
隼人
俺には、木田さんがそんな人には思えないんですが
由良
柏木くん……?
隼人
確かに、人に憑いたりして迷惑な奴には変わりないですけど。でも、俺は話した限りそんなことで人を恨むような奴には思えませんでした
    隼人はどこまでも、真っ直ぐな瞳で美緒を見つめる。
隼人
まあ、貴女方よりは木田さんのことは知らないですが
    遥斗が目を丸くして隼人を見つめる。
由良
美緒さん、死んでからも人って不安で心配なんだと思います。誰にも、見ない存在になっていつの間にか忘れられてしまう。そのうち、自分が本当に生きていたのかも不安になってしまう
   少し、緊張しているのかもしれない。心拍が早くなる。
由良
だから、憎んでなんかいないと思います。だって、遥斗さんは一番に美緒さんに覚えていてほしいはずですから
由良
(って、ちょっと生意気なこと言い過ぎたかな……)
木田遥斗
ごめん、ありがとう
    遥斗が少しはにかんで笑う。
由良
あ、いえ!なんか、生意気なことを言っちゃって
木田遥斗
由良、美緒に伝えてもらえる?
由良
はい!
木田遥斗
じゃあー



私は遥斗の言葉を紡いだ。彼が、死んでからもずっと伝えたかった言葉を。
      これで、二人が前に進めるのだろうか。

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桃木昴
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桃木昴
桃木昴といいます。 歩け!恋する百鬼夜行!連載中です。 読んでくださる皆様の日常の楽しみになれる作品にしたいと思っています。 ちなみにアイコンの犬はうちの愛犬です❤️
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