
第1話
1歩目
目の前の私より頭2つ分大きい男が冷たい指先で私の頬を撫でる。
切れ長の瞳に、整った鼻筋。薄っすらと笑みを浮かべる唇。私は、こんな完璧な顔を見つめていられるほど心臓が強くない。
遥斗の言葉が妙に引っ掛かる
遥斗の顔がゆっくりと私に近づく。
テレビで見ていた時は、爽やかイケメンのイメージだったけど
近くで見ると色っぽく感じる。
吐息が掛かるほどに近くなる。
このまま、舞い上がって飛んでいきそうな気分だ。
遥斗が嬉しそうに微笑んでくる。
私は、自分の頬をつねる。
遥斗が早口で捲し立てて、私の頬を両手で包む。
私は、思わず遥斗の手を振り払う。
遥斗は、自分の手を見つめている。
ピピピピッピピピピッ
どこからか、携帯端末のアラームの音が聞こえてくる。
アラームの音が遥斗の声をかき消す。
ピピピピッピピピピッ
私は、携帯端末を探してアラームを止める。
私は、ベットから体を起こす。
携帯端末に電源を入れて昨晩見た、ニュースのページを開く。
三年前に死亡した元モデル木田遥斗。
雑誌minminで幻のオフショットの掲載が決定。
ここは、私の部屋だ。私しかいない。
私は、ゆっくりと声がする右側を向く。
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