第14話

姉ちゃん男なれるじゃん
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2020/05/06 16:24
ゆづ(弟)
ゆづ(弟)
姉ちゃん男なれるじゃん
咲ちゃんに今の声のまま歌い手として活動していくのは絶対にダメだと言われてしまい、どうしようと悩んでいた時だ。
あなた

──え?どういうこと??

男になれるとは一体どういうことなのか。

するとゆづが机の引き出しから何かを取り出し、ボタンを押す。

『ポ〇モンGETだぜ!!!──お〜、我ながらサ〇シのモノマネ上手いかも…』
あなた

だあぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!

いつの間に録音していたのか、どうしてもっとマシなセリフを録音していなかったのか。

ゆづの方を睨むが、怯える様子もなく鼻歌を歌いながらパソコンに向かっている。

──待てよ…よく考えたら…

やっぱりゆづは天才である。

咲ちゃんの言っていた、『あなたちゃんになっちゃダメ!!!』という言葉の意味もよく分かった。
ゆづ(弟)
ゆづ(弟)
気づくの遅いよ。
──最初から録り直しね
あなた

はーい、なんかゆづが冷たいけどまぁいっか!!!──あ〜、あああ〜

アス((なまえ)の歌い手男の子版)
アス(あなたの歌い手男の子版)
──ん、こんなのでどう
ゆづ(弟)
ゆづ(弟)
お〜、いいと思うよ。
じゃあ早速それでいってみよう
まさかこの声がここで役に立つとは思っていなかったので、何とも不思議な気持ちだ。

誰か気づいてくれる人は居るのだろうか。

ちょっとした悪戯心も芽生え、私は『歌い手アス』としての生活に楽しさを覚えていた。








中田咲(なかたさき)
中田咲(なかたさき)
────こ、これ、ほんとにあなたちゃんなの…??凄いね…
あなた

えへへ、ありがとう!!まさかこの声がこんなとこで役に立つとは思ってもみなかったからさ、正直私も驚いてるんだ〜

中田咲(なかたさき)
中田咲(なかたさき)
これなら誰もあなたちゃんだって分からないと思う!!!私ずっと応援するからね、
『アス』くんのこと
私からあんな声が出るとは誰も想像しないだろう。

正直咲ちゃんに認めてもらえるか不安だった。

でもずっと応援する、その一言でそんな不安も何処かに消えてしまった。




結奈
結奈
──さすがあなたちゃんだね
あなた

あれ、結奈ちゃんは驚かない…なんで??

結奈ちゃんも咲ちゃんみたいな反応をするのかと思いきや、極々普通だった。

ちょっとガッカリしたのは内緒にして欲しい。
結奈
結奈
ふふ、あなたちゃんよくこの声で叫んでたよ??覚えてない?
結奈ちゃんには敵わなかった、流石です、はい。

結奈ちゃん曰く、歌詞が出来上がった時や歌い終わった後、結奈ちゃんと会った時等想像以上に叫んでいたようだ。
あなた

──あはははは…そんなこともあったようななかったような…

結奈
結奈
早く帰って投稿しておいでよ!!
結果、楽しみにしてるからね!!
そう言って、結奈ちゃんは私の背中を優しく押し出す。

躓きそうになりながら、私は結奈ちゃんと別れ猛ダッシュで家に帰った。

ゆづは既に部屋に居て、パソコンと向き合っていた。
あなた

はぁ、はぁっ、ただいま!!!
初動画、投稿するぞ〜!!!

ゆづ(弟)
ゆづ(弟)
姉ちゃん遅いよ、おかえり。
──それでは行きます!!──えいっ!!!
遂にこの日、『歌い手アス』が誕生した。

と同時に、私は結奈ちゃんとの約束を果たす為の第1歩を踏み出した。

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