よくあんなこと言えたな…なんて、今更後悔しても遅いのに。
本当に嫌いなのは、大好きな親友に八つ当たりした私の方だ。
結奈ちゃんのお葬式には行かなかった。
と言うより、あんなこと言っておいて行ける訳がなかった。
大好きな歌を歌う気力も出なくて。
ただただ部屋に引き篭る生活を続けた。
中学校も始まっていたけど、そんな所に行く余裕もなかった。
ママも家族も皆、気を遣ってか何も言わないでいてくれた。
本当なら看護師さんにも、ママにもちゃんと謝らなきゃいけないのに。
今日は一段と泣いた気がする。
いつも通りだけど、私は眠気に勝てずいつの間にか意識を手放していた。
結奈ちゃんの体がぐらぐら揺れて、声も何を言っているのか分からなくなった。
待って!!!置いていかないで!!!そう手を伸ばした時には、私はいつもの日常に戻っていた。
締め切っていたカーテンを一気に開けると、目が開けられない程太陽は輝いていた。
結奈ちゃんが死んでから、1ヶ月ちょっとが経った。
(なんで今まで夢に見なかったのに、今日は見たんだろう)
恥ずかしくて、顔を合わせるのが変に緊張して、私は家族に向かって敬語で挨拶をしていた。
(だって1ヶ月ちょっとぶり!!!)
こんな私に呆れてないかな、嫌いになってないかな、なんてそんな見苦しいことを考えてしまう。
家族の温かさと優しさには負けてしまう。
毎日枯れるんじゃないかって程涙を流したのに。
ママに病院まで車で送ってもらい、私は結奈ちゃんが居た病棟に足を運んだ。
緊張していて手足が震える。
それでもこんな所でうじうじしていられない。
やっぱり私のことを怒ったり冷たくあしらったりしない。
それどころか、私の体調を気にしてくれている。
なんで…その一言が聞こえていたのか、看護師さんはクスッと笑った。
目の前で息を引き取っていく人たちを何人も見てきたんだろうな…そう思うと、看護師さんやお医者さんって本当に凄いんだなと思う。
泣きそうになるのを必死に堪え、私は大きく深くお辞儀をして病棟を後にした。
正直大嫌いな病院。
でも今日だけは、なんだか温かさを感じた不思議な場所に思えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。