朝から外は雨が降っていた。
おめでたい日を空は祝ってくれないのか、時々雷の音さえ聞こえる。
憂鬱な卒業式になりそうだ、胸のざわつきも今日は一層大きい。
何も起きませんように…そんなことを願いながら傘をさす。
6年間一緒に頑張ってきてくれた、薄黒い黄色の傘。
入学した時は、真っ黄色だったのに。
小学校6年間、あっという間に時は流れる。
多くの友達は同じ中学だけど、将来の進路を考えて、別々になった友達も多くいた。
悲しいけど、夢への1歩を皆歩み始めてるんだ。
私は気持ちを切り替え、親友がいるであろう教室へ走った。
声すら出せなかった。
長い重い空気が周りを包んでいく。
折角のおめでたい日なのに。
なんで何も話してくれなかったの??
友達だと思ってたのに。
大好きだったのに。
胸が苦しくなって、上手く息が出来なくなる。
やばい、そう思った時には手遅れだった。
担任の先生が隣で何か必死に叫んでいる。
何も聴こえない、何も見えない。
結奈ちゃんと笑って過ごした思い出さえ、絵の具で黒く塗りつぶされて見えて。
今日は重症だなぁ…なんて考えながら、私は意識を手放した。
何もない真っ暗な場所に、私は1人立っている。
天国という所なのか、地獄という所なのか。
ただずっと遠くの方で、誰かが私に手を振っている。
こっちだよ戻っておいで、そう言っている気がして。
何故か無性にその人に会いたくなって。
私は走り続けた。
走る度に痛む身体よりも、何か忘れてはいけない大切な物のような気がしたから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!