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第1話

悪い知らせ
96
2018/01/23 06:18
「ふう…。今日も疲れましたわ。」
そう言って私は迎えの車に乗る。何も変わらない、いつも通りの風景だ。

「おかえりなさいませ。本日もお疲れ様でした。行きたい場所などございませんか?お望みならどこへでもお連れいたします。」
「無いわ。うちへ帰ってちょうだい。」
「かしこまりました。」
これもいつもの風景だ。

「そういえば、旦那様がお嬢様にお話があるそうですよ。」
車が走り出して少ししたとき、私の執事である黒崎拓海(くろさき たくみ)は思い出したかのように言った。
「お父様が私に?何かしら?」
「わたくしも知らないのです。」
「一体、何なのかしら…。」
私は何の話か見当もつかなかった。

何気なく車に付いているテレビに目をやると、目を疑うようなニュースが放送された。
『次のニュースです。自動車製造大手の天堂自動車が倒産したことが会見で明らかになりました。』
テレビには、会見の映像が映った。
天堂自動車は私のお父様が経営している会社で、私は社長令嬢の天堂沙羅だ。
もっとも、過去の話になってしまったが。

「えっ!?嘘よ……。」
嘘だ。嘘に決まってる。
私は呆然と画面を見つめていた。
ニュースが告げる真実を信じられなかった。

「ちょっと黒崎!どういうことよ!?」
私は黒崎にがなる。怒鳴ったって倒産は取りやめにならないのに。
「お嬢様、落ち着いてください。
…確かに近ごろ、旦那様の顔色がすぐれませんでしたが、まさかこんなことになっているとは……。」
私も黒崎も、ただただ呆然とするしかなかった。

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