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第6話

4*サザンカ*
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2019/03/26 07:36
 ミンギュとの最後の人生。彼とはまだ出会っていない。生まれているのかどうかも、定かではない。例外なんていつ起こるかわからないから、今世は出会わないかもしれない。そんなこと考えてしまうほど、1人になって長かった。

それにしても、つまらないな。あいつがいない人生が、これほどつまらないとは。やりたいことも全部やって、夢も叶えて。大型モニターにいつぞやのミュージカル映像が流れている。あの頃が1番楽しかったな。


公園のベンチに座ると、遠くで高校生達がはしゃいでいるのが聞こえた。コロコロとひとつのボールが転がってきて、僕の脚にコツンと当たった。

『すいませーん、今そっち行きます!!』

焦りを含んだ声で1人の青年が走ってくる。

「はい、どうぞ。」

『ありがとうございます!!優しいですね…あなたはずっとそうだ』

「…え?」

不思議な言葉を残し、ニヤッと笑って去っていった。駆けて行く彼の背中には、既視感がうっすらとあって。僕は目が離せなかった。


しばらくして、ミンギュと再開するんだけどどんな毎日だったかは、秘密にさせて。恥ずかしくて、大切にしたい思い出が沢山だから。


ただ、これだけは言える。もし、ミンギュと出会わなければ、僕は悪魔のような死神に成り果てていただろう。世界を悲観的に見て、人を見下して。そうならなかったのは彼がいたから。人との関わり、愛すること、生きる喜びを教えてくれた。あたたかい心をくれた。

彼は最後の人生を全うして、僕のそばから離れていった。これから、一人。気が遠くなるほど、一人の毎日が始まる。


これから4人の墓に行こうと思う。彼との人生は毎回違くて、持っていく花も違くて。ちょっと大変だけど、それもまた楽しいんだ。
想いを込めた花達を庭から収穫して、包んで持っていく。


4人目のミンギュにピンクの綺麗な花を供える。モノクロだった空間に言葉どうり花を添えて、華やかに、寂しくないように。


「また来るよ、元気でな」



僕を押し出すように強風が吹き、サザンカの花びらがひとつ、風に乗って飛んで行った。



*サザンカ*
科·属名 ツバキ科ツバキ属
学名 Sasanqua
繁盛期 11~12月

花言葉 『永遠の愛』

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