中也さんに手を引かれたまま進む僕
正直まだ何があるかを把握しきれていない。
繋がれていない右手を顎に近づけもう一度考えてみるけれど.......
やっぱり何があるのかわからない僕にはどこに行くのかなんて分かるはずがない。
ニヤリと笑う中也さん。
僕は女にされてしまう?!否、そんなことあってはならない。
だって、僕は男だから!!
中也さんは立ち止まる。
繋いでいる手は何故か細かく震えている。
少し見えた横顔。
それは.......
すごい勢いで僕の方に向き直す。
顔はまだ赤い...。
再び歩を進める中也さん。
手は繋いでいない。
僕、怒らせちゃったかな。
少し悪く思ったので離れて歩く。
悪気は無かったんだけどなぁ。ただ、ちょっと可愛いなって.......。
僕は最近おかしい。そう思う。
だって僕は男なのに男の人に可愛いという感情を抱く。
好きと言われて嬉しく感じる。
今までなかった感情に少し違和感を覚える。
あれも、これも全部.............。。
嬉しく思ってる.......。
またまたフラッシュバックしてきた記憶。
1人で赤くなる。
あぁー。だめだめだめ!!
顔を思い切り左右に振る。
今まで見られていたとは思ってもいなかったから、急に恥ずかしさが込み上げてくる。
興味を無くしたのかそのまま進む中也さん。
視線を上げるとそこには.......
中也さんは不敵な笑みを浮かべていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。