僕には魅力も何にもない。
顔だって少し幼いし、性格も弱気でいい所なんてひとつもない。
なのに、どうして...。
芥川は僕を離さないんだ
もう、僕から何もとらないでくれよ。
もう充分とっただろ...。友達も住む場所も家族も...!
神様なんて信じてないけど、僕は恵まれてない。好かれていない。嫌われている
そんなこと充分わかっているけど。
でもやっぱり誰かに愛されたかった
そう云いまた強く抱きしめてくる。
真剣な顔
してるんだろうなぁ。
でも、やっぱり僕は...。
走ってきたのか太宰さんの荒い息が聞こえる
声の感じからして怒っていることが芥川の胸にいる僕にも分かる
足音が近づいてくる
優しい顔
さっきまで芥川の胸の中にいたはずなのに今は太宰さんの顔がはっきり見える
僕はコクコクと必死に頭を縦に降る
太宰さんの愛が痛いほど僕に伝わったから
抱擁を解き手を伸ばしてくる太宰さん
今日は手を繋ぐのを断らない。
優しく頭を撫でてくれる。
僕も愛されているんだ。
単純にそれが嬉しい。
本当にありがとうございます...。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!