抑えようとしてもどんどんと出てくる僕の記憶と涙.......。
溢れていた涙を拭い鼻をすする。
僕は確かに人を殺した。
それも何年も前に.......。
本当に僕は人食い虎なのだ。
泣いていたことを悟られないように顔を逸らす。
太宰さんは優しく僕を撫でた。
自然と両手に力がこもる。
涙も止まらず流れてくる。
太宰さんは一瞬とても冷たい顔になった。
でも直ぐにまた優しい顔に戻る。
そして、何かを言うのを悩んでいるようで顎に手を置き空を見つめている。
そう言うと太宰さんは首をかしげ、違うかなと呟く
涙をもう一度拭い、笑顔を作る。
太宰さんはふぅっと息を吐くと何やら怪しげな笑みを浮かべた。
わけも分からず僕は首を傾げた
今度はいつも通りの優しく、何を企んでいるか分からない笑顔。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!