絶対いるって分かってきたでしょ。太宰さん...。
太宰さんは完全スルーで僕に話しかけてくる
返答に困る僕を太宰さんは引き寄せた
ニヤニヤと笑う太宰さんに舌打ちをする芥川。
本当に悔しそうにしている。
でもこんなオシャレな店に一人で来るなんて凄いな
僕なら無理だよ
声の方を振り返りもせずに太宰さんはため息をつく。
肩も下にストンと落ちる
今ひとつ状況を理解していない僕は2人のやり取りに目を追うのが精一杯。
このちっちゃい人は誰なんだろう
名前は確か...。
声が出ていたことにも気づかず何故僕が話しかけられているのかも分からない
ポカーンと少し下にある目線に合わせてみる
中也さんはとても慌てた様子で僕の肩を鷲掴みゆらゆらと縦に揺らす
2人が睨み合いの喧嘩になる。
そのうちに中也さんは僕の手を取りさっきまで2人がかけていた席に座る。
僕に謝りつつ、微妙に距離を詰めてくる。
そして僕の腕に手を伸ばす。
そう云いながらずっと腕を触ってくる。
撫でるように優しく。
でも、だんだんこそばくなってきた。
唇を舐め、ニヤリと笑った顔で僕に近づいてくる。
その顔はどんどん大きくなって...
あぁ。僕のファーストキスが奪われてしまう。
今日初めてあった人に...。
どうせなら...。
あの人がよかったのかもしれない
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!