楽しい時間は直ぐに過ぎ去っていく
初めて乗ったコーヒーカップ。
ジェットコースター。
全てが楽しかった。
芥川とも沢山話した。
太宰さんと中也さんは途中で見かけなくなったけれど.......。
今は観覧車に乗っている。
さっきまでいた地上がどんどん遠くなってジオラマのように見える。
僕は初めて見る景色に釘付けになっていた。
狭い空間に二人きり。
自然と芥川との距離も近くなる。
でも、それ以上に近い。
それでも芥川は僕との距離を詰める。
やけに心臓が五月蝿い。
芥川の目を見る。
真剣だ.......。
僕は...
僕は...
芥川はまた近づく。
反射的に僕は手を出してしまう。
芥川を拒否するかのように.......。
少し紅くなっていた芥川の顔。
それも一気に白く、いつもの冷徹な顔に戻っていく。
二人きりの空間に気まづい空気が流れる。
僕は最低だ.......。
でも.......。
『ありがとうございましたー!』
元気な店員さんの声が聞こえる。
『これからもお幸せに』
去り際、そう言われた。
でも、芥川の表情は何一つ変わらない。
下を向きながら出口に向かう。
そう言い手を引っ張られる。
そういうと、手を離し僕達に背中を向けた。
僕は芥川の方を向き、言葉を発した
芥川は少し嬉しそうにしていた。
僕は訳もわからず、ただただ中也さんに手を引かれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。