僕達はコーヒーカップに向かった。
手を繋いで...。
今は平日の十時。
人はかなり少ない。
だから僕らが手を繋いでいても誰も何も思わない。
僕はこんな格好しているけど顔は男だし...。変な目で見られるのも嫌だな...。
芥川は少し悲しそうに聞いた
一瞬言葉に詰まる
男同士だし、こいつ敵だし...。
断る理由は沢山あるけど嫌な理由は何一つ見つからない。
僕は芥川と手を繋いでいたいのか?
今日の僕の時計はおかしい。
早く感じたり遅く感じたり。
今はコーヒーカップまでの道のりがとても遠く感じる。
そう言うと同時に芥川の手に力がこもる。
少し前を歩く芥川の顔は全ては見えないけれど多分真っ赤になっていると思う。
恥ずかしい時
すぐ、顔を隠すよね.......
何故かその姿も愛おしく感じる。
好きじゃない.......のに。
初めてあった時、
とても優しかった。
あの時、芥川は.......
それは、本当?
ずっと?
僕には信じられない。
人間なんて。
友達なんて。
誰も...誰も.......
芥川だ.......
匂いも、感触も全部.......
3秒もしないうちに抱擁は終わる。
そして、僕の顔をみ、頭をポンポンとなでた
芥川は顔を真っ赤にした。
もちろんその手は顔を隠している。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!