やりたい事もなければ、やるべき事もない。まぁ、あったとしてもやる気は起きないだろう。そんなあのニュースを見た日から一ヶ月くらい経ったある日、俺は我が家で一人グダグダとしていた。
ネットで適当に調べたら、そろそろ何か起こってもおかしくはないらしい。前々から絶倫の相手はしていたわけだから、受精確率は低いわけではないけれども…腹には特に変化が見られない。
記憶を辿っても心当たりはなく、かと言ってまふに連絡することでもないと思い、俺はスマホを手にTwitterを漁った。
閉じたまぶたを開くと、血相を変えた旦那が、俺の方を揺らしていた。働かない頭とぼんやりした視界で、自分が眠っていたことに気づく。
まふは安心した表情を見せると、俺に抱きつき、死んだかと思ったと言った。そんなの言い過ぎだ、なんて言おうかと思ったけど、巻き付く腕の強さから本気で心配してたんだと思い、俺はあえて言わなかった。
そっか。言われてみれば、腹が痛くてTwitterいじって報告ついでに現状呟いたような気がする。
まふの顔をやっとしっかり見れた俺は、素直にごめんと謝った。それでも、まふの顔から不安が消えたような様子はなかった。
零れたように弱くそう言うと、まふの顔から不安や焦りの色は消えていった。
ただそんな大丈夫なわけはなかった。
壁に身を傾けながら足を進め、また嗚咽感を感じ逆戻り。俺はあれから何日も、自室と手洗い場の往復を続けていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。