「いつもの席」に座って、授業が始まるのを待つ。
教室の窓際、一番上と、一つ下。
いつもグクと独占する。
私はわりと、この距離感が好きだったりする。
そう言われて周りを見回すと、珍しく満席だった。
そういえば、話を聞くだけで単位が取れる なんて夢みたいな噂が流れてたような。
私たちはいつもこの先生の講義を受けているから分かるけど、そんなことは決してない。
確かに課題は少ないし、話も面白いから受けていて苦ではないけど…
いくら何でもその噂には無理があるような。
そういって苦笑いを浮かべる、名前も知らない彼女は
とても綺麗だった。
女の私からみても綺麗で、きっとモテるんだろうなぁ…と自分と比べて落胆する。
自分の苗字が好きじゃない。
ありきたりだし______。
人に褒められるということに慣れていなくて、どうしても戸惑ってしまう。
やっぱり彼女は綺麗だった。
私もそんなふうになれたら、と思ってしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。