虎杖悠仁said
『あ、…』
先程まで寝転んでいたあなたがムクっと体を起こし、携帯に目をやった。
伏黒と釘崎の後にあなたと戦う予定だった俺は、その行動を見ていると、
不意に目が合った。
しかしその目は数秒合った後に逸らされ、あなたは五条先生の方へと歩いていった。
『五条先生。 任務入りました。』
淡々とした口調でそう伝えるあなたからは先程のような呪力量は感じられなかった。
伏黒と戦っている時のあなたは別人みたいだった。
「えぇ… そっか、気を付けてね。」
五条先生は少し残念そうに肩を落としたが、直ぐに切りかえて手を振った。
あなたは伏黒と一緒で1年なのに単独行動できるんだ…
『じゃあ、行ってきます。』
あなたは五条先生に手を振って歩き始めた。
「(せっかく戦えるのに、)」
と何だかんだ楽しみにしていた俺は肩を落とした。
あなたは歩き始めていた足を止め、こちらを振り返った。
そして、微笑んだと思ったら
『今度は手合わせしてね、』
と言った。
あなたが笑った顔は胸がムズムズする感覚になるんだよな…
なにか返さないと、と口を開けた時にはあなたは既に後ろを向いていた。
「おい、待てよ東明。」
足がすくんで結局何も言えなかった俺の隣を、伏黒が通り抜ける。
少し離れたところで話すあなたと伏黒は何だか楽しそうに笑っていた。
伏黒の手からあなたに渡された何かを見極めることは出来なかったけど、
渡された時のあなたの表情はビックリしたような、嬉しそうな顔だった。
今度こそあなたの背中は小さくなって、やがて消えていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!