これは一体、どういう状況なのだろうか。
何故私は今、喧嘩をしようとしている場で
若くんに抱きしめられているのだろうか。
ー数分前
あなたの名字あなたの下の名前。現在絶賛迷子継続中である。
夏休みに入った私は空いている時間で住んでいる街の散策を行っていた。
私のいた時代と現在じゃ地形が若干違うんだよねぇ…
助けを求めるならドラケンくんとか三ツ谷くんあたりかな…
でもこの頃三ツ谷くん、距離が近くて心臓がもたないんだよねぇ
悶々としながらガラケーをカチカチといじる。
こちらに来てから初めて触ったガラケーも今じゃ手馴れたものだ。
…あ、
カチカチしていた手を止め、青く光る名前に決定ボタンをタップする。
耳元で聞こえたイケボに思わずガラケーを落としてしまう。
驚いたでしょ!と言いながら落ちたガラケーを拾い上げる。
その瞬間だった。
ビュッと何かが私の頬をかすめる。
見なくてもわかる、肌が切れた。
そして私の手元にはナイフが落ちている。
さっきまではなかったはずのナイフが。
あと1センチでも動いてたら…手に、刺さってた……
若くんはナイフの飛んできた方向を威嚇しながら私を引き寄せる。
ギロリと睨む若くんはいつも話している若くんとは違って不良を彷彿とさせている。
……って、嘘でしょ!?喧嘩するの!?!?
…は?え、ん???
私と、真一郎くんが…こいび、え?
何!?馬鹿なの!?!?
話が通じなさそうな人たちに思わずため息が漏れる。
…ん?
ギュッと抱きしめられ、体温が上昇していく。
へ、へ!?
なぜ若くんは怒っているのだろうか。
というよりなんで喧嘩をする雰囲気なのだろうか。
その言葉に相手の顔色が段々青くなっていく。
当たり前だ、この地域の伝説。
最強の元総長がお怒りなのだから。
今日も今日とて、この世界は平和です。
知らんけど。